有名人百合系SSまとめ
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CICO×YUKIA02
作者:不明
10分位タクシーに乗っているとCICOが住むマンションの前まで着いた。

「はい、とうちゃ〜く!な?めっちゃ近いやろ?」
「ホントだね」

CICOのいつもと変わらない、楽しそうに話す姿を見て、YUKIの顔からも自然と笑みがこぼれていた。
エレベーターが14階で止まる。マンション自体は大きな造りだけれど、部屋数そのものは
その階には5.6個しかないような感じ。丁度中央あたりまで来たところでCICOが家の鍵を
取り出す。薄暗くて、目を凝らしてようやく見える位だけど、右上の方に、それは恐らく
字の感じからすると「YAMAMOTO」とローマ字で書かれているプレートがある。

(CICOちゃんって、こーゆーとこ意外ときっちりとしてるんだよね…二人の名字が一緒だから、 CICOちゃんちに来ると自分の家に帰ってきたようで、だけどドアの造りが全然違って、何か 変な感じ…CICOちゃんはそんな事思ってないだろうな…山本なんて、どこにもある名字だけど、 そんな些細な事でもあたしは嬉しいんだよ?CICOちゃん…)

開けたドアの横に立ってCICOがさりげなくエスコートしてくれる。中には初めて見る風景。

「はい、どうぞ〜」
「おじゃまします」

CICOよりも先にYUKIが上がる。

「CICOちゃん、部屋は変わっても相変わらず綺麗にしてるね」
「え?そうかな?まぁYUKIに比べたらそうでもないんちゃうかな」
「いや、きれいだよ」
「ほんま?ありがと!ま、とりあえず座って×2!」
「うん…」

YUKIをリビングに座らせるとCICOは台所に小走りで移動していった。

「YUKI〜!」
「んー?」
「ちょっと来て〜!」

よいしょと立ち上がるとYUKIも小走りでCICOの方へ向かった。
冷蔵庫のドアに手を掛け立っているCICO。そしてYUKIが冷蔵庫の前に立った時、一気にドアを開けた。

「じゃ〜んっ!!」
「…ど、どうしたの!?これ!」
「へっへ〜」

そこにはビールからワインまで、あらゆる種類の酒がビッシリ、そして綺麗に並んでいた。

「CICOちゃん、いくらお酒好きでも1人でこんな飲んだら…」
「な〜に言うてんの、YUKIちゃんは。今日の為に買っておいてん」
「すごいね、これは…」
「YUKIさ、みんなでワイワイって、あんまり好きちゃうやん?あたしと二人なら気兼ね
なく飲めるんちゃうかなぁ〜なぁんてね」
「CICOちゃん…」

YUKIはCICOが自分の性格を理解してくれている事、そして何より自分の事を気に掛けていて くれた事が今更ながらではあるけれど、とても嬉しかった。YUKI自らが酒を選んでる間に CICOは更に奥で何かごそごそしている様だったが、とりあえずYUKI一人でリビングに戻る。

「つまみはカロリー控えめでな」

そう言いながらCICOが戻ってくる。本当にCICOはYUKIの全てを分かっているようで。
デビューする前・直後、外見的な事でコンプレックスの塊だったYUKIの気持ちを変えて くれたのもCICOだった。体重が元に戻ってはいけないからと、YUKIが食事に気を遣って いる事もCICOには分かっていたしYUKIもCICOがそれを理解してくれてる事は分かっていた。
だけど、そんな中でも、YUKIの大好物のマシュマロはちゃっかり入ってたりして。

どれ位飲んだだろうか…久し振りの酒で、しかもCICOと二人とゆう事で、 気兼ねする事無く飲んでいたYUKIは泥酔にも近いほどに酔っていた。

「CICOちゃん、相変わらずお酒強いにぇ〜へへっ」
「ちゅうか、YUKI今日飲み過ぎやで。どしたん?」
「え〜?どうもしないじょ〜。えいっ!」
「痛っ!なんで空手チョップやねん!」
「あっはっは!おっかしぃ〜」

今まで見たことのないYUKIの酔い振りにCICOはさすがに今日は泊めるべきだと思った。
そして、ふと二人の間に静かな間が出来る。そんな中、先に口を開いたのはYUKIの方だった。

「ねぇねぇ、CICOちゃん、CICOちゃん」
「ん?」
「今彼氏居ないって言ってたけど、好きな人とかは居ないの?」
「どうやろなぁ〜」
「ねぇねぇ教えてよ〜」

CICOは内心焦っていた。どうにかこの会話を止めなければならないと。

「あんまり年上をからかうもんちゃうよ?」
「え〜ずるい〜!」
「さ〜て片付けでもするかなぁ」

テーブルに転がった空き缶を取って立ち上がりながら台所へ向かおうとしたその時、 服の腰辺りをYUKIが掴んだ。CICOは「ダメだよ、YUKI…」と思いながら目をつぶり 下唇を噛み締める。
それとほぼ同時に平静を装うふりをしながら振り返る。

「なに、どしたん?」
「あたしの好きな人言うから、そしたら、そしたらさ…」

YUKIは今にも泣き出しそうな顔をしていた。CICOは片付けようとしていたゴミを置きYUKIの両肩に手を置く。

「YUKI、今日飲み過ぎやで?それにあたしの好きな人とか聞いてどうするん?」
「聞きたいもんは聞きたいの!」
「なら、先にYUKIから言い。名前を聞く前に先に名乗るってのが礼儀やろ?」
「意味がよく分かんないけど…」

CICOはもう覚悟を決めていた。もう戻れないかもしれないとゆうリスクを分かった上で。
だけど、最後の最後で踏み切れない自分も居て、YUKIに押しつけてしまった自分が居た。
YUKIより6歳も年上なのに情けないと感じつつも。ようやく話し始めたYUKI。
けれど、YUKIは確信を突く所には触れようとしない。

「やだ…言いたくない…」
「そう。なら、うちも言わへん」
「だって!だって…言ったらCICOちゃん、あたしを軽蔑する…」
「せぇへん」
「もう、一緒に居てくれないかもしれない!」
「んなわけないやん。YUKIがどうであっても、あたしにとってYUKIはYUKIや」
「ほんとに…?」

YUKIの目をまっすぐ見つめるCICO。YUKIがふぅっと深呼吸をして息を整える。
その答えを、目線をそらさずにYUKIが口を開くのをじっと待つCICO。

「あのね…あたしが好きな人…女の人なの…」
「うん…」
「軽蔑…しないの…?」
「するわけないやん」

話をするYUKIの声はわずかに震えていて、目からは今にも涙がこぼれ落ちそうになっている。

「それでね…その人、いつも明るくて、あたしが辛い時、いつも一緒に居てくれて…」
「うん…」
「だけど、同性だからいけないって思ってて…」
「そんな事、あらへん」

わずかな沈黙が流れた後、

「CICOちゃん…あたしが好きなのは…CICO…」
「もうええ!もうええよ、YUKI…」
「だって、あたし一番肝心な部分言って…」
「YUKIの言いたい事は、充分すぎる程分かってるから!」

そう、CICOは自分がYUKIから友情以上の思いを寄せられてる事に、もう気付いていた。
けれど、CICO自身、これと言った確信がないままで、どうしようもない思いに駆られていた。
そう、今この時までは…

「YUKI、ビックリせんと聞いて欲しいねんけど」
「うん…」
「さっきは、はぐらかしてもうたけど、うちも好きな人おる」
「…うそ…誰?」

YUKIの目には、より一層涙が浮かぶ。

「今、目の前におんねんけど」

YUKIの目からは何かの線が切れたように大粒の涙がこぼれ落ちた。

「うそだよ…あたしがCICOちゃんの事好きだからって気を遣って…」
「うそちゃう」
「だって、他のメンバーとは抱き合ったり平気でしてるのにあたしには全然してこないじゃん!
絶対うそだ!CICOちゃんなんか嫌いっ!」
「うそちゃうって!」
「嘘つき!やだ!あたしに同情なんかしないでよ!嘘っ…んっ」
YUKIが今にも暴れ出しそうなのと同時に、その唇が塞がれた。上から押さえ込むような荒々しいキス。

「んっ……っ、」

徐々にYUKIの腕から力も抜けて、それと同時にCICOからのキスも、決して無理に唇の中に押し入ろう とはしないものの、全てを包み込むような優しいキスにかわる。
ゆっくりと唇を離した後、CICOは優しく、そして強くYUKIを抱きしめた。

「何とも思ってへん子に、キスなんかせぇへん…」
「うん…」
「それから、さっき他のメンバー達とは抱き合ってたりとか言うてたけど」
「うん…」
「YUKIの事を意識するようになってから、逆に恥ずかしくて…出来ひんかった…」
「CICOちゃん…」

CICOは続ける。

「それからな、うちに来たとき、表札見た?」
「うん…多分、ローマ字で山本って書いてあった…それ見てCICOちゃんって」

話をしようとするYUKIを抱きしめていた自らの体から離し、YUKIの右手を引いて立たせ、 CICOは玄関に向かう。

「…え?ちょ、ちょっと…CICOちゃん…?」

YUKIの問いかけに、CICOは振り返らない。靴も履かないまま勢いよくドアを開けたCICO。
その手にはいつの間にか小さなライトが握られている。そして表札にライトをあて、
そこでようやくCICOが口を開く。

「見て」
「……え?」

そこには「YAMAMOTO」ではなく、「YAMAMOTO's Room」と綺麗に刻まれたプレートが刺さっている。
そしてドアを閉め、ドアの中央辺りにライトを当てるCICO。

「こっちも見て」
「これ…」

ドアには「143」の数字が刻まれていた。

「143 〜YAMAMOTO's Room〜」それが何を意味するのかは、YUKI自身、いや、
BENNIE KであるYUKIとCICOの二人には難なく理解する事が出来て…

そして、CICOはYUKIの手を引いて再び部屋に戻り、二人でソファに座り込んだ。
僅かな沈黙のあと、CICOが口を開く。

「引っ越した事、YUKIに言ってなかったやん?」
「うん…」
「仕事の帰りに不動産屋でな、この部屋偶然見つけてん」
「うん…」
「もうな、運命やって思えてん。せやから、前の部屋すぐに引き払ってここに引っ越して来てん」
「うん…」

いつの間にかCICOの手をYUKIが優しく包んでいた。
「YUKI…うちの事、子供みたいやなとか思ってへん…?」
「そんな事思ってないよ。ただね、あたしがCICOちゃんを想ってる間に、CICOちゃんもあたしの事を
こんなに想っててくれて…それが嬉しくて…だってさ、[YAMAMOTO」じゃなくて「YAMAMOTO's 」でさ、
複数形で、それってあたしも含まれてるって事でしょ?」
「うん、せやで」
「それって、めっちゃうれしいねんけど」

YUKIのぎこちない関西弁に、思わず二人ともプッと吹き出してしまう。
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