2007/01/09
CICO×YUKIA01
作者:不明
「おつかれさまでした〜」
スタッフの声がスタジオに響き渡ったのは夜中の2時過ぎの事だった。時間が早ければこのまま
打ち上げだけれど、さすがに今回は後日だと、スタッフがBENNIE Kの二人に告げる。
「はぁ…疲れた…」
そう言うと楽屋のイスにYUKIがドサッと座った。
「CICOちゃん、疲れてないの?」
いつもと変わらず元気なCICOを見てYUKIが問いかける。
「ん〜?まぁ疲れてるっちゃあ疲れてるけど、まぁ平気やで。いつも元気で居ようって
気持ちやないと、余計に疲れるやん?」
そう言って、CICOがYUKIに笑いかける。
(あぁ、CICOちゃんてすごいな…CICOちゃんがこーゆー性格じゃなかったら、
今のあたしは居なかったと思う…)
YUKIはCICOの性格が好きであり、羨ましかった。そして何より、今まで幾度となく、
CICOの笑顔や性格に助けられた事に、心底感謝していた。
トントン。
楽屋のドアをノックすると同時に、2人がどうぞと言う前に男女5.6人が騒がしく二人の楽屋に入ってきた。
今回PVに参加してくれたメンバー達だ。CICOは楽しそうにメンバー達とワイワイしていたが、YUKIはそれに 構いもせずメイクを落としていた。何か問いかけられれば返事をしてはいたけれど、何せYUKIはそういった状況が あまり得意では無かったし、だから、自分から輪の中に入るとゆう事も滅多になかった。
鏡越しにCICOがメンバー達と抱き合う姿が目に入る。
ズキッ…
YUKIの心の音が変わっていく。
YUKIはこの気持ちが、女性同士でよくある友人を独占したい事からくる気持ちではなく、
また別の感情からくるものだと分かっていた。そして、最近では忙しいこともありCICOとの
コミュニケーションも減り、そういった事が益々YUKIを不安にさせていた。
YUKI自身、自分のCICOに対する気持ちが、単なる友情ではないのだと悟るまでに、
それなりの葛藤があった。今までに男性と付き合ったことも何度かある。
だけど、どれも長続きしなかった。そして恋愛が上手くいかない時、仕事が上手くいかなくて、
もう辞めたいと悩んでいた時、いつだって横にいたのはCICOだった。
どんなに辛くでも、励ましてくれたのはCICOだった。YUKIの横にはずっとCICOが居た。
YUKIに必要なのは、どんな男性よりも、楽しい時も辛い時も一緒に乗り越えてきたCICOだった。
そして、YUKI自身、自分が一番一緒に居たいのはどんな男性でもなくCICOであると自覚していた。
しかし、CICOは自分の事なんてただの仕事仲間にしか思っていないに決まってる。
だからこの気持ちは間違ってもCICO本人に言ってはならないのだと、YUKIは心に決めていた。
「じゃあ、お疲れ様でした…」
相変わらずメンバー達と騒いでいるCICOを尻目に、YUKIはそそくさと楽屋から出て
関係者用出入り口をあとにし、タクシーに乗り込もうとしている時だった。
「YUKIっ!」
聞き慣れた声と足音がこちらへ向かってくる。
「…え?どうしたの?CICOちゃん…」
「ごめん!ちょっと5分だけ待っててくれへん?すぐ来るから!な!」
「あ…うん、わかった…」
そう言うとCICOは楽屋へ走っていき、私服に着替え、2.3分で戻ってきた。YUKIはCICOのこういった面も好きだった。
小さな事かも知れないけど、5分と言いながら、半分の時間で戻ってきてくれる。自分の為に走って、息を切らして。
そんな事を考えてる間に、CICOはすでに乗り込んで、YUKIにタクシーの中から声が掛かる。そしてYUKIが乗り込んだ
ところでCICOが自宅の住所を言う。
「…え、CICOちゃん…引っ越したんだ…?」
「うん。」
「それで…あの、あたしはどうすれば…」
「ん?あ、ああ、今日うちでYUKIと二人だけでささやかな打ち上げやろうと思ってん」
「いや、でも…」
「このスタジオ、偶然やけどうちからめっちゃ近いねん」
「そうなんだ…」
「それに、別に明日オフなんやし、何なら泊まってったらええやん?」
「いいの…?ってゆうか、大丈夫?」
「ぜーんぜんかまへんよ!」
そう言ってYUKIに満面の笑みを返すCICO。
(CICOちゃん引っ越した事すら教えてくれなかった…それにズルイよ…あたしの気持ちも 知らないで…でも、あたしの事、何とも思ってないからこそ、こうやって誘ってくれるん だろうな…それにしてもCICOちゃん家に泊まりにいく事自体、どれ位ぶりだろう…)