有名人百合系SSまとめ
前へ | 次へ
┗吹石一恵A01
作者:789 ◆1Cz5bN8eQk
「どう?酔い醒めた?」多江はソファにもたれている一恵に声を掛け麦茶の入ったコップを勧めた。
「すいません・・ホントに・・」
一恵は申し訳なさそうにコップを受け取ると半分程飲み机に置く。
「そんなに飲んだかなぁ・・」
一恵が見せる自嘲気味な笑みに多江も 柔らかな笑みで応える。
「たまたま悪酔いしただけよ。すぐ治るわ」
「どうせ明日は休みだし、なんだったら泊まる?」
「えっ?いいんですか?」一恵は少し驚いた口調だ。
「いいわよ、それに貴女の歓迎会企画したの私なの。それなりに責任 持たないとね。『家に帰るまでが歓迎会なのよ』」
おどけて見せる多江。
つられて一恵も「じゃ、お言葉に甘えてお泊りしまーす」と応える。

「多江さん、ここの一階ってコンビニでしたよね。ホッとしたらお腹空いて来ちゃったんで何か買って来ます」
酔いも醒め、すっかり元気を取り戻した一恵が傍らのトートバッグから財布を取り出しドアへ向かう。
「じゃ行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」多江が軽く手を振り送り出す。
「ガタンッ」
 ドアが閉まると同時に多江がソファーで安堵のため息をつく。
”この年になって、こんな気持ちになるなんて・・”
”でも「好き」なんて言った所で、退かれるだけよね・・”

多江自身、女子高に通っていた頃一度だけ下級生から告白された。
当時は自分が同性から恋愛対象として見られている事に戸惑い、俯きながらラブレターを渡してくる下級生に、 「嬉しいけど・・そういうの良く分からないから・・ご免ね」としか言えず、逃げる様に帰宅した。彼女を振り返りはしなかった。
只、此処に居てはいけない気がした。

ドアが開く音がして、現実に戻る時が来た。一恵が帰って来たのだ。
「ただいま帰りました〜」一恵の伸びやかな声が響く。
「お帰り〜」ソファで伸びをしながら多江が応える。
「色々買って来ました」一恵は袋からお菓子を次々と机の上に並べていく。
並べ終わると同時に多江の横に座り込む一恵。 
「多江さん、好きなのどうぞ。私はどれにし・よ・う・か・な」
指を伸ばし無邪気な表情でお菓子を選ぶ一恵の横顔を多江が見つめる。
「え・・私の顔何か付いてます?何か視線がw」
不意に一恵が多江に向き直る。
「違う、違うw フーちゃん可愛いな〜と思って見とれてるだけよ」
多江のなにげない一言に一恵が戸惑いを見せた。
「可愛いって・・・え・・どうしようw」
一恵の恥ずかしがる表情さえ多江にとっては堪らなく愛しい。思わず抱きしめたくなる位だ。
一恵は明らかに戸惑っていた。品定めしていたお菓子に手を伸ばす事もなく、多江の顔も直視出来ず、心此処にあらずといった感じにさえ映る。
「ゴメン、ゴメン変な意味じゃないからw 誤解しないで」
慌てた多江はフォローに躍起だ。戸惑う一恵を何とか落ち着かせなければ・・
その時、意を決したように一恵が多江を見つめた。
「あの・・多江さん、私の事どう思います?」
一恵の真摯な眼差しがあった。
「妹みたいに可愛い後輩って感じかな・・私は妹居ないから上手く説明出来ないけど・・」
一恵の眼差しに圧倒されながらどうにか言葉を紡ぐ。
「私、多江さんの事好きです。入社した時からずっと。今日の歓迎会だってずっと横に多江さん居てくれて・・ 多分、緊張しすぎて悪酔いしちゃったんだと思います」

「そうだったの?でも、こんなオバサンの何処がいいのよw」
”まさか相思相愛だったなんて・・”
多江は動揺を誤魔化すかの様にいつもの口調で言った。
「多江さんは私の憧れなんです。奇麗で、格好良くて・・多江さんみたいになれたらなってずっと思ってました」
目の前には多江の知らない一恵がいた。多江が知っている天真爛漫で無邪気な一恵ではなく、多江に切ないまでの思慕をぶつける一人の少女がいた。
「私、こんな気持ち初めてなんです。でも私みたいな子供じゃ相手にされないかも・・と思って黙ってたんです。でもいつかは」
一恵が言い終わらない内に多江がそっと唇を塞ぐ。多江の突然の行動に一恵も呆気に取られる。
「多江さん・・?」
「貴女が私の事をそこまで想ってくれてるなんて、知らなかったわ・・本当は私も貴女に一目惚れだったの。でも私も初めてだったから不安だったし身を退いてたのね。貴女みたいな可愛い女の子が私なんかに振り向く訳なんか」
今度は多江が言い終わらぬ内にそっと唇を塞がれた。
「これでお相子ですよね」口調がいつもの天真爛漫な一恵に戻っていた。
それを見て安心したのか、多江も笑顔だ。
「そうね。こんな事だったらもっと早く告白しとけば良かったわね・・二ヶ月近く悩んでたのが勿体無いわw」
「じゃあ、これから取り戻します?」
一恵の悪戯っぽい眼差し。
「一緒に、ね。お互い初めてだからぎこちないけどw」多江も応える。

「フーちゃん、私もなんだかお腹空いてきたわ。せっかくお菓子買ってきてくれたんだし食べましょ」
多江が一恵を促す。が、一恵は返事をしない。
少し俯き思案顔といった様子だ。
「どうしたの?」多江が尋ねた。
「私・・お菓子より多江さん食べたいなw」はにかみながら一恵が応える。
”あ、いっちゃった・・”といった表情で多江の反応を伺う一恵。
「ホント言うとね、私もフーちゃん食べたいの」
そう言うなり多江は一恵に寄りかかり一恵の頬にキスをする。「取り戻さなきゃ、ね」
多江の意味ありげな笑み。それは明らかに一恵を挑発し、虜にしていた。
「多江さん・・・」一恵が多江に操られるかの様に身を委ねる。
「フーちゃん、今まで誰にも見せた事のない貴女を見せて・・」
多江の唇と一恵の唇が重なり、どちらからともなく吐息が洩れる。
「んふぅ・・・んんっ・・・」
お互いを慈しむ様な、しかし攻撃的な接吻が続く。
「舌出して・・」多江が囁く。一恵の遠慮がちな舌を多江の舌が迎える。
二人の舌先がまるで意思を持った生物の如く妖しく絡み合い、淫靡に蠢く。

忘我の中で二人の舌先が妖しくヌメり、淫らに糸を引く。
「フーちゃん、こういうの初めて?」悪戯っぽく多江が尋ねる。
「は・・はい・・でも凄く気持ち良かったです・・
でも、多江さんってキス上手なんですね」余韻に浸る一恵。
「アリガト、でも、私も初めてよ・・冗談でチュ−した事はあるけど、ここまでのは無かったわ」
「ホントに?」一恵は信じられないといった表情だ。
「相手があなただったから、ここまで情熱的になれたのね、きっと」
多江は一恵を抱き寄せ、おでこに軽くキスをする。
多江の一言に一恵は今までに無い至福を感じた。
”私と多江さんが一つになれたんだ”といった安心感が一恵の表情にも現われている。
「私がここまで大胆になったのも多江さんのおかげですよぉ〜責任とって下さいね、た・え・さ・ん」
このページの先頭へ | 前へ | 次へ