二次元キャラ系SSまとめ
★ドラマ系 >
カバチタレ
TVドラマ版
■放送期間:2001年1月11日〜3月22日
■CX系
■主な登場人物
田村希美…常盤貴子
栄田千春…深津絵里
大野 勇…陣内孝則
田村優太…山下智久
宮城京子…篠原涼子
★ドラマ系 > カバチタレ >
┗希美×栄田A01
作者:不明
◆キャスト
田村希美…常盤貴子
栄田千春…深津絵里
…ちょっと、何これ栄田さん!ちゃんと掃除してんの!?」
希美は真昼間に千春の部屋に上がり込むなり、いきなり千春に巻くしたてた。
今日は千春の仕事がオフの日で、希美は千春の部屋に遊びに来たのだ。
「あーもう、うるさいわねぇ!あなたに言われなくったって掃除しなくちゃいけない事
ぐらい分かってるわよ」
千春はそんな希美に睨みを利かす。
この様なやりとりは日常茶飯事。
他の人から見たら険悪なムードだが、二人にとってはもう当たり前になっていた。
希美が温泉宿に売られそうになったのを千春に助けてもらって以来、何だかんだで縁が続き、
今では仲の良い友達の様な関係になっている。

「ほら、栄田さん、あっち行ってて。掃除するから」
希美はベッドのほうを指差すと、掃除機を引いて千春をその方向へ追いやった。
「ちょっと、あなた何すんのよ!!
あたしはゴミや洗濯物と違うのよ?
そんな非人間的な扱いなんかしていいと思ってるわけ?」
ベッドの上にどさりと座ると、千春はわあわあとわめき散らした。
すると、希美は千春の方に体を向け、目を輝かせる。
「わぁ…栄田さん、ゴミと洗濯物なんてナイス喩え!
でも、それ栄田さんの被害妄想だから。
あたしそんな事言ってないし」
そう言うと希美はまた掃除の続きを始めた。
千春は何だか面白くなく、口をへの字に曲げる。
すると、何を思ったか、急にニヤリと笑った。

「もう、希美なんて大っ嫌い。
今日、せっかく夕飯に国産牛奮発しようと思ったのに」
千春は勝ちを見越した表情をしながら、腕を組んで希美を見上げると、これならどうだと
でも言うように、最後に含み笑いまでさえした。
そんな千春を見て希美は目をしばたかせる。
一瞬考え込む素振りを見せると、希美は千春の元にすたすたと近付いていった。
「ふーん、あたしは千春の事大好きだけど…」
そう言って、千春の肩に手をかけると、華奢な体をそのままベッドに押し倒した。
千春は突然の事で、何が何だか分からずに身動きが取れない。
二人の視線が合わさり、互いの瞳に互いが写り合うほどの近距離。
「ちょ、ちょっと、あなたっッ!?何してんのよっ」
千春は希美の肩を押し、何とか押し退けようとした。顔はかぁっと赤く染まっていく。
「えぇー、せっかくのいいムードで『あなた』はないんじゃないの」
希美は明らかに千春の反応を面白がっている。
千春はますます顔を赤く染め、更に希美を楽しませた。

「あたしの事、ホントに嫌い?」
「……え」
希美は千春が答えるのを待たずに、千春の額、頬、首筋と、いたる所に口づけた。
「やだぁッ、の、希美ぃ…やめてよぉ」
千春は必死に荒がう。
そして、希美はようやく顔を上げた。
「じゃあ言ってよ、好きって…言ってくれたらやめるから」
希美はくすりと笑うと、千春を見つめ、頭を撫でた。
千春にとって希美の視線は痛く、羞恥心を更に募らせる結果となった。
「………なに言ってんのよぉ…す、好きに決まってるじゃない…」
千春は蚊の鳴くような声で言葉をつむぐと、ぷいとそっぽを向き、目をぎゅっと瞑ってしまった。
「栄田さんの口から本当にそんな言葉が聞けるなんて嬉しいなぁ。かっわい〜」
思わず希美は千春に抱きついた。

「ど、どきなさいよ〜約束したでしょ!!
それに、『栄田さん』はやめてって言ってるじゃない!」
希美はその言葉に素直に従い、千春を離し、ベッドから降りた。
千春はほっと胸を撫でおろす。
「じゃあ、千春!
国産牛よろしくね!!」
突然の言葉に思わず千春は目が点になった。希美は満面の笑みで千春を見つめている。
「もう訳わかんない…まぁいいわ。
可哀想な希美ちゃんのために奮発してあげる」
ふっとため息をつき、呆れた声を出すと、眉をしかめつつも微笑んだ。
それに釣られるかのように希美も声に出して笑った。
「じゃあ、早く掃除しちゃうね」
希美は千春に背を向ける。
「よし、国産牛ゲットぉ〜」
千春に聞こえないように小さな声で呟くと、希美はガッツポーズをした。
「え、なんか言った?」
「いえいえ〜」
希美は鼻唄を歌いながら掃除に戻って行った。
★ドラマ系 >
ラブコレ
Gyaoドラマ
■2006年(何度もアンコール放映あり)
■Gyaoオリジナルドラマ
■主な出演者
原彩果…内山理名
川野のりこ…星野真里
鈴木夏樹…松本莉緒
甲斐優馬…松尾敏伸
山田みどり…青田典子

★公式サイト
★ドラマ系 > ラブコレ >
┣山田×夏樹A01
作者:山田一座
◆キャスト
山田みどり…青田典子
鈴木夏樹…松本莉雄
「…でもまさかホントに来てくれると思わなかった…はいビール」
「ありがとうございます」微笑む夏樹。

「あーおいしー!! (^_^)」
「…どうして来てくれたの?」

風呂上がりに山田の部屋でくつろぐ2人。
あ、もちろんまだ入るのは別(笑)

「『どうして』って、わざわざ聞きますかそれ(笑)」
「夏樹ちゃんの口から聞きたいの!」
「う〜ん…」
期待の目で夏樹を見つめる山田。

「やっぱり言ってあげない!」

「言ってよ!! 私だって勇気出して告白したんだから」
「ダメですー」と言いながらベットの方向へ逃げる夏樹。
「こらっ言え〜」
キャーキャーと子どものようにはしゃぐ夏樹を背後から捕獲。

「つ・か・ま・え・た」
「う〜騒いだら酔いが回っちゃいました」と山田に身を任せる。
「だ、大丈夫!?」
「このままにしといてくれたら大丈夫ですよー。あ、髪が濡れててごめんなさい」

夏樹を後ろから抱きかかえるような状態のままの山田。
山田の両手を愛しそうに握り微笑む夏樹。

「ううん、平気よ。髪…いい匂い」
濡れた髪にキス。 一瞬身体が反応する夏樹。
髪をかきあげて右の耳にもキス。 さらに大きく反応する夏樹。
山田の舌が耳を舐めると 「あっ…」と思わず声をもらす。

「耳、感じる?」
「…うん」

さらに首筋から頬へ。
少し振り向く夏樹と一瞬見つめ合う。

「好きよ…夏樹ちゃん」
「…私も…大好き…キス…し…て」

最初はやさしく子どものようなキスをして、 見つめ合い照れ合い微笑み合う。
そして繰り返し繰り返しキス。

いつの間にか泣いている夏樹。
「ど、どうしたの!?」
「なんか、うれしくて…大好きで…すごくうれしい」
「私の方こそ、うれしくて死にそうよ!!」
「大げさですねーフフフ」

(うーん、えっちはもう少し先にしとくかー)と 夏樹を大事に思う山田であった(笑)
★ドラマ系 > ラブコレ >
┣山田×夏樹A02
作者:山田一座
◆キャスト
山田みどり…青田典子
鈴木夏樹…松本莉雄
仕事を終え帰宅した2人。
夏樹のチンドン屋ぶりも板についてきた。
汗びっしょりの夏樹は早々と着物を脱ぎ始める。

「今日暑かったですねぇもう夏って感じー。あっでもその前に梅雨かぁ…私、雨キライなんですよね、ヘアースタイルが決まらなくて…ん? どーかしたんですか山田さん?」

なにか言いたそうに、白塗りのまま夏樹を見つめる山田(恐)

「ン?…なんか変なこと言いました? 私」
「ううん」

今日こそ「一緒にお風呂に入ろう」と言いたいが言えない!!
サウナなら誘えるのに。

「お風呂一緒に入りましょうね」
「えっ!?」
「温泉でまゆみさんたちとみんなで入ったことはあるけど、2人っきりではないでしょ?」
「え、ええ…」
「今日、初めて入ろうね(*^^*)」

鼻歌を歌いながら着物をたたむ夏樹の後ろ姿を呆然と見つめる。
(私、そんなに物欲しそうだったかな…)

「じ、じゃお湯入れるわ」
「お願いしまーす」

夏樹は少し熱めのお湯が好きだったはず。
浴槽を軽く磨きお湯を入れる。
蛇口をひねる手が心なしか震えている。

「私は生娘か!」

緊張をほぐすためにふざけてみるが、震えは止まらない。
夏樹のことを大事に思うあまり、今日まで抱くことが出来ないでいる。
(こんなこと、初めてだわ…)
山田はため息をつき脱衣所に立ち尽くしてしまった。


「山田さーん」
「は、はーい?」
「カツラと着物のままお湯入れてるんですかー? ダメですよー」

化粧を落とし、いつものピンクの部屋着に着替えて夏樹がやってきた。
「はい、カツラ取って。先に入ってますから早く来てくださいね」
「…うん」

(まだドキドキする。さりげなく誘えたかな…変じゃなかったかな)
あのキスの日からもうだいぶ経った。
初めての女性との恋愛…このあとの進展が夏樹にはわからない。
自分の気持ちはしっかりと山田にある。
でも…いつまで経ってもキスから先に進まない関係…。
女同士ってこんなものなのかなぁ。

身体を鏡に映してみる。
思い切って誘ってみたものの、自分にそんな気持ちになってくれなかったら…
(私は山田さんが欲しくてたまらないのに…)
夏樹は不安な気持ちのまま、いつもより念入りに身体を洗いはじめた。
★ドラマ系 > ラブコレ >
┣山田×夏樹A03
作者:山田一座
◆キャスト
山田みどり…青田典子
鈴木夏樹…松本莉雄
以前は座員も使っていた浴室はかなり広く、
湯船は有に大人2人でも足を伸ばして入れるくらいはある。

脱衣所のドアが開き山田が入ってきたようだ。
「あ…来た」
山田がバスタオルを外すシルエットが見える。

「お待たせ。ごめんね」
「ううん。サウナで3時間待たせた私よりマシ(笑)」
別の方向を向いて会話を交わす2人。
なぜかお互い相手を直視できない。

温泉に行ったりサウナに行ったり…
今までも同じようなシチュエーションはあったはずなのに、
気持ちを確かめ合ったあとだとこんなにも違うなんて…。
夏樹は不思議な気持ちで山田の背中を見つめていた。

「入っていい?」
「はい…」
向き合って座ると真正面から目が合ってしまい、言葉が出なくなった。

続く沈黙。

たまらず山田が「…こっちおいで」と夏樹の手を取り引き寄せた。

「や、山田さん…後ろ抱っこ好きなんですね」
この間のキスの時と同じ状態で、後ろから山田に抱かれる夏樹。
「ええ、するのもされるのも大好きよ」
「私も。でもまだしたことはないですけど」

(…こんなにドキドキして山田さんに気づかれたらどうしよう。
でも、背中越しに…山田さんの動悸が伝わる。…すごい早い…。
手もこんなに震えて…山田さんも私と同じくらい緊張してるんだ)

山田の胸が夏樹の背中にあたり、
その柔らかい感触と緊張の中、身体を山田に預けてぼんやりと目を閉じた。

どうやら夏樹も同じ気持ちでいてくれたらしい。
鼓動の激しさがそれをあらわしている。
大事に思うあまり、淋しい思いをさせてしまったようだ。
(ごめんね)
夏樹を抱く手にギュッと力を込めた。

山田の指が夏樹の指先に絡みつく。
無意識に力が入る夏樹のしなやかで長い指。

「…夏樹ちゃん?…夏樹ちゃん?」
「…はい?」
「湯あたりしてない? 大丈夫?」
「…はい…大丈夫です」

夏樹の腕をなぞる山田の指が、肩を通りうなじで止まる。
おくれ毛をもて遊びながらキスをする山田。
夏樹はくすぐったそうに小首をかしげて微笑む。

「綺麗なうなじ…」
うなじから耳の後ろに舌を這わせ耳たぶを軽く噛んでみる。
「あっ…」
「耳が感じるのよね」
「…うん」

夏樹はたまらず山田の方に向き直り、首に腕をからめ抱きつく。
激しく上がる水しぶき。
夏樹の口元の水滴を山田が「ペロリ」となめた。
一瞬驚いたように夏樹の目が大きく見開かれたが、すぐに閉じられ
その動きに合わせるようにお互いのくちびるが重なった。
★ドラマ系 > ラブコレ >
┗山田×夏樹A04
作者:山田一座
◆キャスト
山田みどり…青田典子
鈴木夏樹…松本莉雄
初めての時とは比べものにならない強さで 互いのくちびるを求め合う2人。

好き、好き、好き
愛してる、愛してる、愛してる

まるでキスの強さで気持ちを伝え合っているかのように。

「私…ずっと…待ってたん…だから」
「ごめんね、ごめん…」

山田の舌がゆっくりと入ろうとするのを夏樹のくちびるが迎え入れ、やわらかなお互いの感触を確かめ合うようにからめ合う。

「…山田さん、私のこと好き?」
「う…ん…大好きよ…」

すうっと山田から離れ、意地悪くと微笑むと「どのくらい?」と上目遣いで聞く。
引き寄せて耳元で「今まで出会った誰よりもよ」とささやく。
夏樹は満足したように再び山田の胸へ。

「…やわらかい。女の人の肌って気持ちいいね。今まで知らなかった」
「でも私、夏樹ちゃんよりずいぶん年上だから…お肌も曲がりきって…(苦笑)」
「全然綺麗ですよ! 私より胸も大きくてちょっとムカツクぐらい(笑)」

山田の胸にキスをする夏樹。
「キスマーク…つけていい?」
「うん」

左の乳房を強く吸い、少し噛んでみる。
「いたっ!」
「あ、ごめんなさい」
「もう! ワザとでしょ」
「フフフ…ついたね」

山田の白い肌にくっきりと残る赤いアザ。
それを夏樹が指でなぞり「しるし」とつぶやく。
「しるし?」
「うん」
「なんの?」
「私のものだよって、し・る・し」

(なんて愛しいの…)

頬に耳にまぶたに首に…
夏樹のすべてを愛しむかのように優しいキスの雨を降らせた。
★ドラマ系 >
きらきらひかる
TVドラマ版
■放送期間:1998年1月13日〜3月17日
■CX系
■主な登場人物
天野ひかる…深津絵里
杉裕里子…鈴木京香
月山紀子…松雪泰子
黒川栄子…小林聡美
田所新作…柳葉敏郎
★ドラマ系 > きらきらひかる >
┗天野×杉A01
作者:不明
◆キャスト
天野ひかる…深津絵里
杉裕里子…鈴木京香
コンコン、
約束の時間よりほんの少し早い。ちょっと弾んだノックの音は、あの娘がやって来た合図。
どーぞと声を掛けると、遠慮気味にドアが開いた。

「先生!」

入って来るなり小走り。飛びついてこようとした天野に、眉をひそめて見せる。

「駄目よ」
「えっ」
「後にしてくれる?まだ仕事中」

そっけなく鼻先にペンを突きつけてやったら、天野は目を丸くして。
そのまま大人しくソファに腰を下ろして、おあずけをくらった子犬みたいに。うなだれてる姿にちょっと吹き出す。
ホントはすぐにでも抱き締めてやりたいけど。楽しみは一気にがっつくものじゃない。

「早かったのね」
「え?そりゃあ…だって…会いたかったですから?」
「ふーん」
「ふーん、って!」

そんな真正面から会いたかっただなんて言われて、素直に喜べるはずもなくて。
照れくさくてありがとうも言えやしない。

「冷たいんですね、先生」
「そう?」
「そうですよ!先生は、わたしに会いたくなかったんですか?」

両手を膝に置いて、まっすぐな目。そんな天野を横目に見ながら、内心大急ぎでレポートを片付ける。あと、少し。

「さあ。会いたかったと言えば会いたかったし、会いたくなかったと言えば会いたくなかったし」
「またそんなこと言ってー…!」
「ね。私、時間通りに来てってあなたに言わなかった?」
「…言いました」
「言ったわよね。なら、早く来すぎたあなたの責任よ。違う?」
「そうです、けど」
「そ。なら、大人しく待ってるのね」
「もー、わかってますよー!…」

勢いでちょっと腰を浮かしかけていたらしくて、しばらくしてまたストンと座る音。
どうしてこう意地悪ばっかり言ってしまうのか、自分でも良く分からない。
…許してね、天野。
後でいっぱい甘えさせてあげる。
そのためにもやっぱり、これを早く片付けたい。私はしばらく仕事に集中する事にした。

「……」
「……」
「…せんせ」
「なーに」
「……」
「……」
「すーぎせーんせ」
「ん?」

先生、って今ので七回目。呼んだ後に言葉が続かないから問いただしてみれば、ただ呼んだだけだとか。
何がしたいのかさっぱり分からないけど、なんだか可愛くて仕方ない。
そう呼ばれるのは嫌いなはずなのに。どうしてかこの娘に呼ばれるのは…悪くない。



カタカタ、カタ!
キーボード、最後の一行。
時間はぴったり。

お待たせ?

椅子ごとくるりと天野の方を向く。途端にぱぁっと広がる笑顔。

ほとんど同時に立ち上がって、一歩、二歩。
ゼロになる距離。
なんだかもうたまらなくなって、抱きつかれる前にこっちから抱き締めてやった。

腕の中で小さく「わぁっ」って聞こえて、なんとなく笑いが込みあげる。

「先生──」
「あー会いたかったっ」

あんまり嬉しそうに聞こえないように、ちょっと投げやりな感じに。きっと隠しきれてない、けど。

そのまま肩に顔を埋めたら天野がぎゅーっと抱き返してきて、頭なんか撫でてくれたりして。
──やっとありつけた。
おあずけくらってたの、ホントは私の方かもしれない。なんて思いながら。
あんまり心地良くて、もうほんのちょっとだけぎゅっと抱いてやった。
★ドラマ系 > きらきらひかる >
┗天野×杉B01
作者:◆XozsP3Xhnw
◆キャスト
天野ひかる…深津絵里
杉裕里子…鈴木京香
いつからだろう。
憧れだと思っていた気持ちを、恋心だと確信するようになったのは。

事故現場で出会った雪の降る夜。
亡くなった人がいる事故だから「出会い」なんて言ってはいけないような気がするけれど、あれは紛れも無く私と杉先生の出会いだったのだ。

あれから私は監察医になり、関東監察医務院に就職した。
杉先生は好きじゃないだろうけど、私流に言うのであれば「運命的に」私たちは巡り合い、黒川さんや月山さんと女4人でご飯を食べたり出来るような仲になった。

杉先生は、妹さんの事件や色々あったけれどやっぱり医務院に戻ってきてくれた。
勿論、私のためではないのは分かっているけれど、こうしてまた一緒に働けるのはとっても嬉くて、でも、ずっとずっとつらい。

この気持ちを隠さなければいけないから。

そう、私は杉先生に恋をしている。

今日は仕事もひと段落ついて、初夏の日差しが普段は殺伐としている医務院にも和やかな空気を照らしている。
田所さんは「ちょっと出かける」と言ってお墓参りに行ったみたいだし、黒川さんは期限間近のエステ割引券を使うと言って早引けしてしまった。

私は、特に用事も無いんだけれどなんとなく顔が見たくて、杉先生の部屋をノックした。


コンコン  

「はーい」

あれ、機嫌が良さそうな杉先生の声ともう一人、あの人の声が聞こえる。

「あら天野じゃない、ちゃんと働いてる?そうやってすぐ顔に出さないの、『サボって杉先生とおしゃべりしに来たくせに』って思ってるの分かるわよ。」

そう、月山さんだ。妹さんの一件があってから杉先生と月山さんは仕事の件でよく杉先生の部屋で話をしている。
本当に事件のことなのだろうか、こんなに頻繁に来ていて・・・。無駄に疑ってしまう自分がうらめしい。

「ほら、天野が仕事を持ってきたんじゃない?私はそろそろ聞き込みに言ってくるわ。」疾風のように月山さんは去っていった。どうしよう、仕事なんて無いのに。

「ほら、天野が仕事を持ってきたんじゃない?私はそろそろ聞き込みに言ってくるわ。」疾風のように月山さんは去っていった。どうしよう、仕事なんて無いのに。

「あ、杉先生・・・あの・・・」

「仕事なんて特に無いのにどうしよう、って顔ね。紀子は何にも分かってないんだから。どうしたの?」

月山さんが見抜けなかったことを杉先生が分かってくれたことに、戸惑いよりも嬉しさを感じた。

「いえ、えっと、特に用事は無いんですけど・・・」

「やっぱりね。じゃあ、そこの書類を日付が若い順に並べるの、手伝ってくれない?どうせ暇なんでしょ?」

「はい!」

嬉しくて声がつい大きくなる。ちょっと呆れたように杉先生は笑って、でもあっという間にクールな表情に戻って背を向けて仕事を始めた。

「・・・・・・・・・先生」

「先生って呼ぶのやめてって言ってるじゃない」

「先生!!!今は仕事中じゃないですか!?なんで月山さんが先生の部屋にいるんですか?
もうあの事件は片付きましたよね?ていうか仲悪かったのになんであんなに仲良くしてるんですか?!」

やばっ・・・最後につい本音が出てしまった。

「天野。今日は仕事のことじゃなくて、冴子の男のことを教えに来てくれたの。
もう縁は切ったはずだけど、冴子にも捜査に協力してもらうかも、って。
確かに勤務中だったけど私たちはオンだかオフだか切れ目が無いような仕事でしょう。
なんでそんなにつっかかるの。何が言いたいの?」

まずい・・・怒らせてしまった。だってあんなに仲が良さそうにしているから。


「仲良くしてちゃ、悪い?」

えぇぇっ??なんで心が読まれてるの?!?!

「あなたは表情で分かるのよ。ほら、本当は何が言いたいの?言って御覧なさい。」

そんなに綺麗な顔に近寄られて叱られたら、隠せるものも隠せなくなってしまう。
もういいや、この際どう思われても。先生には、背を向けてみた。顔を見ながらなんて、言えない。

「いやなんです、杉先生が他の人と仲良くしているのが。





   私は杉先生が好き・・・だから」

言ってしまった。怖くて顔が上げられない。どんな顔が待っているのだろう。軽蔑に満ちた眼差しだろうか。それとも?



「分かってたわよ、そんなこと。あなたはやっぱり気づいていないのね、私の気持ちに。」


え?と思いおそるおそる顔を上げた瞬間、後ろから抱きすくめられた。杉先生の匂いに包まれる。

「いつ言ってくれるか、ずっと待っていたのよ。」

「じゃあ、先生はずっと気づいてたんですか?!?」

信じられない!!ずるい!!!

「これからその埋め合わせをしてあげるから・・・ずっと。いいでしょ?」

嫌だなんて言えるわけがない。嬉しくて嬉しくて、涙が頬を伝っていることに気づいた。

窓の外の雲ひとつ無い快晴の空が、にじんでいた。
★ドラマ系 > きらきらひかる >
┗天野×杉C01
作者:スレ1
◆キャスト
天野ひかる…深津絵里
杉裕里子…鈴木京香
「天野」
「はい?」

床に寝転がって雑誌読んでたら、急に呼ばれて。顔をあげたらソファの上から先生がニコ
リ。
「なんですか?」って首を傾げてみたら、微笑んだまま目でおいでの合図。
わたしは雑誌を放り出して、ソファにとことこ這っていっていった。

「はーい」

先生の足元に到着!見上げるのと同時によしよしって頭を撫でられて、なんだか飼い犬に
でもなった気分。
用事ってこれかな、と思ったそのとき。
急に先生がソファから降りてきて、トスッとわたしのとなりに。何が何だかわからないう
ちに、わたしは先生に抱き締められていた。

「わ……わ」

口から出てくるのは間の抜けた声ばっかり。ちょっともう、何が何だかわからない。首筋に顔を埋められて、くすぐったくて身をよじ
る。

「せんっ、先生!?」
「なあに」
「な……!こ、こっちがなあに、です!」
「何って何よ。甘えてるの」
「ええ!?」

不安定な体勢だったから支えきれなくなって、ついにころんと床に倒れこむ。
軽く頭を打って、顔をしかめたら先生が笑って。わたしはほっぺたを膨らませた。

「もう。なに笑ってるんですか?」
「え?笑ってないわよ」
「笑ってるじゃないですかー」

キッとにらむと、いかにも楽しいって感じでまた笑って。
少し体を起こした先生が今度はほっぺたをつついてきて、思わずどきっとして。なんとも
言えない顔をしてしまった。

なーに、怒ってるの?」
「そりゃあ、怒ります」

ホントにちょっと痛かったのに…、って小声で言ったら、先生は片方だけ眉を持ち上げて。
それから頭を撫でてくれながら、急に優しい声になった。

「じゃあ」
「?」
「どうしたら許してくれる?」
「どうって…」

それは、ごめんって一言もらえれば…って一瞬思って、でもふっと思いとどまる。
せっかくだから、困らせちゃえ。いたずら心がむくむく沸いてきて。
こっちを見おろす先生を、まっすぐ見つめる。

「じゃーあー、先生」
「なあに」
「ちゅーしてください」

ちょっと得意気に笑ってみせたら先生は一瞬きょとんとして、それからなぜか不敵に微笑んで、「いいわよ」と一言。
こっちがびっくりした。

あ──、え?」
「なに」
「何ってあの、ちゅーですよ?」
「分かってるわよ。キスしろって事でしょ?」
「そ…れは、そう、ですけど」
「ならいいじゃない」
「…はい」
「ほら目、つぶって」
「は、はいっ」

やった!まさかそんなにあっさりOKしてくれるなんて。
先生に言われるまま慌ててきゅっと目をつぶる。だんだんドキドキしてきて、少し間があって…

ちゅ。
口じゃなくて、おでこに唇が触れた。

「……」
「なあに、その顔」

分かってるくせに!
道理ですんなりOKしてくれたわけだ。見上げた先生は、してやったりな笑顔。

「ここじゃご不満?」

そう言いながらおでこをとんとんつついてきて、またどきっとする。

「やじゃ、ないですけどー…」
「じゃ、天野は」
「はい?」
「どこが良かった?」
「え」
「教えて。してあげるから」
「そっ、そんなの」

決まってるじゃないですか。そんな意味をこめて、目で訴える。だけど先生は知らん顔。
それなら、ってちょこっと自分の口を指差してみたら、その手ともう片方の手を両方掴まれてしまった。

「どこ。言わなきゃ分かんないわよ」
「…く……」
「く?」
「くちに、ですっ」

きっと顔まっかっか。もうやだ…でも、これでしてもらえる、と思ったら。
ちゅっ、って。今度はほっぺた。
ひどい!

「もぉ、なん──」

なんで意地悪ばっかりするんですか!
言おうと思った言葉は、今度こそ唇に降りてきた唇に塞がれて。
ちゃんとしてくれた…って思ったしゅんかん、なんだか気持ち良くて頭が真っ白になった。

許してくれた?」
「…まだです」
「ええ?」
「あともう二回、してくださいっ」
「なに、それ」

にっこり笑って言ったら、先生は苦笑い。でも、きっとしてくれるから。

「ね?先生」
「いいけど。あなたもよ」
「へ?」
「天野もするの」
「わっ、わたしもですか!?」
「当たり前でしょ。自分だけしてもらおうと思ってたわけ?甘いわよ」
「え…」

最初の甘えんぼな先生はどこへやら。だけどなんだかちょっと嬉しくて。
ふわりと降りてきた先生のもう一回に、わたしはそっと目を閉じた。
★ドラマ系 > きらきらひかる >
┗天野×杉D01
作者:不明
◆キャスト
天野ひかる…深津絵里
杉裕里子…鈴木京香
天野が私の部屋に来ることになった。
以前から来たいと言いたそうにしていたのは気づいていた。
私から誘うのは照れ臭かったので黙っていたのだ。
今日はついに、天野がしびれを切らしたようで・・・。

「杉先生、確かプロジェクター買ったっておっしゃってましたよね。」
「ええ、そうよ」
「うちのDVDプレイヤー壊れちゃったんですけど、明日までに返さなきゃいけなくて。
・・・先生のお部屋で一緒に見てもいいですか?」

なんて可愛いのだろう。でも素直に言わないから、つい意地悪を言ってしまう。

「プロジェクターなら栄子も持ってるわよ。」

とたんに天野がしゅんとする。なんだか次の切り替えしを考えている様子だ。
次は直球かな、と予想してみる。

「杉先生の。杉先生のお部屋に行きたいんですけど。やっぱり急だし、ダメですよね。」
「失礼ね、私の部屋はいつだって片付いてるわよ。
              いらっしゃい。」
最後は努めて優しく言ってみたら、天野には伝わったみたい。いつもよりも元気な「はい!」の返事が返ってきた。

家に向かう間、天野は饒舌だった。

家族のことや学生時代のこと、今住んでいる部屋のこと。
「今度来て下さいね」と最後に言われたときは、それまでの「へぇ」「ふーん」とか「そう」ではなく、「そうね」と答えたこと、天野は気付いただろうか。

うちに着いてからも天野はせわしなかった。
「コーヒー入れるから座ってて」
「あたしやります!」
「いいから座ってて」
「でも私が押しかけたのに」
「キッチンあんまりさわられたくないの」
「・・・すみません」

また冷たくしてしまったみたい。
でもブラックしか飲まない私の家にあなたのためのミルクのポーションが準備してあること、あなたなら気付いてくれるんじゃないかなと思う。
お気に入りの背が低いアクリルのテーブルにマグカップを2つ並べたトレーを置いて、ソファーにちょこんと腰掛けている天野の隣に座る。

「このミルクってもしかして?」

にんまりした、でもほんの少し不安げな天野の顔が私に近づく。
やっぱり分かってくれたのね。

「あなたのために買っておいたのよ」

さらっと言ったつもりだけれど気恥ずかしくて、頬が紅潮するのを感じた。

ソファーを立ってDVDをセットして、照明を暗くする。
暗くしたら胸の高鳴りが天野に聞こえてしまうような気がして、更に鼓動が速くなった。
こんなにも自分が典型的に天野に恋をしているなんて、と心の中で苦笑する。
ふと天野がもってきたDVDのケースを見たら、期限は一週間後。今日借りてきたらしい。
なんていじらしい子なんだろう、こんなすぐばれる嘘をついてまでうちに来たかったなんて。


気づくと、天野は私の肩にもたれて眠っていた。
饒舌になっていたり、立ったり座ったりせわしなく動いてみたり、やっぱり緊張していたのね。
暗くしたら眠ってしまうなんて、本当に子供みたいだ。
止めたら天野が気づいて起きてしまうかもしれないから、ボリュームを少し下げるだけにした。
私はこの映画は昔観たことがあるのでストーリーは今は正直どうでもいい。
肩越しに伝わる体温、無防備な(いつだって無防備だけど)寝顔、小さな寝息、その全てが愛しくて仕方ない。

「すぎせんせ・・・」
寝言でも私を呼んでいるなんて。
「天野、大好きよ。」

夢の中の天野には届かないだろうけど、そう呟いて頭にキスをした。
★ドラマ系 > きらきらひかる >
┣天野×杉E01
作者:どこ天
◆キャスト
天野ひかる…深津絵里
杉裕里子…鈴木京香
[どこまでも下な天野も好きだ]

「たまには…っ…、私のいうことも聞いてください…」

いつもとは違い、視界の反転しない今日。
ちょっぴりお酒が入っている所為かもしれないけれど、私結構とんでもないことしちゃってるのかな。
私の下には、杉先生。
その両眼はしっかりと私を見つめて。
そんなに何でも見透かすような瞳で見つめないでください。私の考えてることなんて、全部お見通しよって…余裕な大人の女性。

だから私は悔しくて、少しでも先生に近づきたくて、焦って必死で頑張っているのに…こんなことくらいでしか反撃出来ないなんて。

「いいわ」

「えっ?」

暫く無言で私を見つめていた先生の手がそっと伸びて、私の首に回される。
驚いていたのと急に力が加えられたのとで、バランスを崩した私はみっともなく先生に倒れこむ形になってしまった。

「いつもいつもやられてばっかりじゃ不公平だものね。たまには天野の言うことも、聞いてあげる」

「先生…」

身体を起こすと、何だか楽しそうな先生の顔。
何考えてるのかなってちょっと気になるけど…笑顔の先生を見れるのはすごく嬉しい。それも、こんなに近くで。
まるで子供をあやすみたいに優しく髪を撫でてくれる、そんなことも、私だけの特権だって思うと…嬉しくて仕方ない。

「ほら、ボサッとしてないで。いつも私のやってることは解ってるでしょう、最初はどうするの?」

…えぇっと、一応私が主導権を握ってるはず…なんだけどなぁ…。

「え…、と…最初は…」

――キス。

「天野?」

自分でもよくわからないうちに、身体が固まる。どうしちゃったんだろう、私。キス…っていうのは解ってるんだけど、どうしてだか身体が動いてくれない。

酔いがさめてきちゃったんだろうか、それとも瞳が逸らせないくらい綺麗な唇に私は魅せられてしまったんだろうか。

「先生…」

焦燥感と情けなさで、何だか泣きそうになる。先生を待たせているのに、身体が動いてくれないなんて…私って一体どこまで未熟者なんだろう。

「馬鹿天野。言ったでしょう?自分の手に余るようなことはするもんじゃないの」

不意に先生の手が下りてきて、私の両頬を優しく包む。その顔は、やっぱり微笑んだまま。
それがあんまり温かくて安心して、思わず溢してしまった涙も先生の指先がそっと拭ってくれる。

「今回…というより、まだまだおあずけね。監察医の仕事と一緒で天野にはまず経験そのものが大切みたいだし」

「…先生、それは」

どういうことですか、と訊こうとしたところで唇が塞がれた。
そして、反転する視界。いつもと同じ、見上げれば綺麗に整った穏やかな顔。

「私の上になるのはまだまだ早い、ってこと」

それからの杉先生の個人授業、私はやっぱりキスまでしか覚えていられなかった。
道程はまだまだ、長いみたい。
★ドラマ系 > きらきらひかる >
┗天野×杉E02
作者:どこ天
◆キャスト
天野ひかる…深津絵里
杉裕里子…鈴木京香
[どこまでも下な天野も好きだ]

想う人がいて、想われる人がいる。
そして、その繋がりには親子や兄弟、親友から恋人まで、ありとあらゆるさまざまな人たちのさまざまな関係がひしめきあっている。
それは、私たちの場合にも例外なくぴったりと当て嵌まるわけで――。

「天野」

「はい?」

差し伸べられる手を、ややあって躊躇いがちに握る手。その温もりを心地好く感じながら、私は思う。
恋人だと、胸を張って周りにそう呼べたら。
でも、私の胸はいつも張り裂けそうな程にこの小さな恋人を想ってる。
そして、きっと彼女も同じ位に私のことを想ってくれている筈。

だったら、私はそれ以上何を望むことがあるだろう。
想う人に想われる、この至上の幸福に何の不満があるだろう。

「…先生」

「何?」

「…大好きです…」

想う人がいて、想われる人がいる。
私たちの場合にも、それはぴったりと当て嵌まる。
恋人という、関係で。
★ドラマ系 > きらきらひかる >
┗天野×杉E11
作者:どこ天
◆キャスト
天野ひかる…深津絵里
杉裕里子…鈴木京香
[個人授業]

杉先生の授業は、キスに始まってキスに終わる。
これが私が身をもって体得した知識…と言うと聞こえがいいけれど、いわゆるわかったこと。
一度は先生を押し倒してみたものの、私ではやっぱり役者不足だったのか何時も通りに立場は逆転し…今、正に個人授業の始まり始まり〜…という感じ。

私、もしかしてちょっと情けないかなぁ…。
でも、嫌われてないならそれで…いいかな、うん。

「そうだ、先に言っとくけど…ちょっと今日は自信ないわよ?」

先生の顔が近づいて、優しい唇を待って瞳を閉じていた私は、その言葉にふと目を開ける。

「…何が、ですか…?」

「優しくする自信。あなたよく『待ってください』って言うけど、今日は待ってあげないわ。覚えといて?」

途端に全身の血が逆流する。頬が熱を帯びて真っ赤になっていくのが、自分でも解る。
さっきから心臓が早鐘を打って仕方ない。人の身体の構造上、心臓が口から飛び出すなんてことは考えられないことだけれど、そういうたとえを作った人は…きっと私みたいな思いをしたことのある人なんだろうな。

「じ、自信がない…自信がないって先生、怒ってる…んですか?あ!もしかしてさっき押し倒しちゃったことですか?だったらすみません、あの、私…」

先生は黙って聞いている。
じっと私の方を見ているけれど、その視線はとても穏やかで…あれ?

――怒ってるんじゃ、ないのかな…。

だったら何なんだろう。
不思議に思いながらも言葉を紡ぐ途中、酔いも手伝ったのかとうとう呂律が回らなくなって軽く舌を噛んでしまった。

「…っ、いた…!」

当然のことながら間抜けな私の失態に、先生も笑い出す。
バカ、と言いながら微笑む、その笑顔が優しいことにも私はひどく安心してしまう。

「あなたもよくよく進歩の無い人ね?誰が怒ってるなんて言ったの」

そしてもう一度楽しそうに『馬鹿天野』と私の鼻先を指でチョンと突く。
何がそんなに嬉しいんだか解らないけれど、でも先生の優しい笑顔を見ていられるなら…それだけで私は幸せ。

「そうじゃなくて…単にブレーキが利かないの」

「っん…!」

急に唇を塞がれて、大好きな先生の笑顔をうっとりと見つめていた私は突如現実に戻される。
何時もよりも激しいキス。
甘く陶酔するような夢心地なんて一体何処に行ったのか、ただ呼吸をすることだけを必死に考える。

「すぎせ…ッ、ちょ、待っ…」

「言ったでしょ、『待たない』の」

言葉も吐息も飲み込むような、嵐のようなキスに簡単に翻弄されてしまう自分が情けない。
唇を割って侵入してきた生温かな舌にも、私の身体は小さく震えて感じてしまう。
初めてなわけじゃないのに、いつもいつもキスだけで、私の頭は真っ白になってしまう。
先生のことだけしか、考えられなくなってしまう。

「んんっ…」

舌が優しく絡み付けば、解こうとしても絡み合うだけ。深く深く絡み合えば、自然と何かに縋りたくなる。
手を伸ばして、そっと先生の腕へと滑らせる。ほんの少しだけ、穏やかになるキス。

服を掴む手を捕えられると同時に、優しく絡んでくる指先。
狂おしい程何かに縋りたい私は、その手を強く強く握り締める。

そうしてその唇がゆっくりと離される頃には、私の身体はふわふわと何処かへ飛んで行ってしまいそうな程に力を失って。
強く握り締められた手の力だけが、唯一私の支えになる。

「努力はしてみるけど…多分無理ね。天野が悪いのよ?大人しく諦めなさい」

「…は…」

頷く以外に、私に何が出来ただろう。

――やっぱり、先生には適いません。

再び唇を塞がれながら、そう思った。
★ドラマ系 > きらきらひかる >
┣天野×杉F01
作者:不明
◆キャスト
天野ひかる…深津絵里
杉裕里子…鈴木京香
ふっとうたた寝から覚めて、伏せていた顔を上げる。
開ききらない目のままゆっくりと部屋を見回す。
壁にかかったカレンダーでしばらく今日の日付を探すうちに、その紙の上に今日はないことに気づいた。

──年。明けちゃったわけ。


まだぼうっとする頭をゆるく振りながら、小さく欠伸をひとつ。
時計は6時を回った所。
いつの間にか机の隅に押しやってある残りのもうひと仕事が、ようやく私の頭を働かせ始める。


「……ん」


起きないと駄目。
これだけは今日中に仕上げないといけないの。
判ってはいるものの、徹夜のだるさが身体中を支配して、ともすればもう一度眠りにつくことも容易い。
──とりあえず…換気?
どうせ今日は誰も来やしない。
今すぐ仕事を再開させなくたって良いのだ。
とにかく、目を覚ましさえすれば。

私はゆるゆると立ち上がった。

雑に開け放った窓から、案外さわやかな朝の空気が飛び込んできて。
目を細めて、まだうす暗い空を見上げる。
この分ならきっと今日は良い天気。
正月はどうしてかいつも晴れる。

くるりと踵を返して、少しすっきりした頭でもう一度部屋を見渡す。
そこで、やっと、電話機の白い紙に目が止まる。


FAXなんていつの間に来たんだろう。


靴音を響かせてそれを手に取って、
…思わず溜め息がこぼれた。




──あげおめ




見覚えのあるその字たち。
発信元の印字。

カントウカンサツイムイン。

まず目に止まったそのでかい字は間違いなく栄子だろう。
あげおめって何なの、黒川。
呆れながら散らされたハートマークを縫って、
──ない?
目を皿にする。
これでもない、これも違う。
こっちは田所の字。
なかなかみつからないのは、あの整った少し丸い字。
そこで、ふっと、無意識に必死で探していた自分に気づいて思わず笑みがこみあげる。

もう一度紙の端から端を見やる。
どうやら私の探す字体はこの中にはないらしい。

こういうの、好きそうなのに?
…また口からこぼれた溜め息が落胆だなんて、思いたくはないけれど。
今頃クラッカーでも買いに走ってるかもしれないどこかの誰かの、
ほんの一言で良いからメッセージがあったら、仕事も捗るのに?
…なんてね。

おめでたい考えをそのどこかの誰かのせいにして、私は諦めて紙を畳んで
大きく伸びをしながら机に向かった。

空が少し白みかけていた。

だいぶ覚めてきたものの、まだうっすらと目がぼやける。
それでもコーヒーをいれに立たなかったのは、何も面倒だからってだけじゃない。
敢えて言うならそう…虫の知らせ。

この私が。虫の知らせ?

人が聞いたら笑うかも知れない。
でも、だって、なんとなーく、いれない方が良い気がするのだ。

むしろ自分でも笑いそうになったまさにその時。
控えめなノックは、
だけど、
静まり返った部屋にまっすぐ響いた。

「──」



言葉はすぐには出てこなかった。
その音の主が誰なのか、
何しに来たのか、
声がしなくたって判ったけど。

きっと来るに決まってるって思っていたのと
まさか来る筈ないと思っていたのと
半々。
でも、

来た。



「先生っ。杉せんせー」


柔らかな声。
ほらね。
やっぱり。

手元に積んだ仕事の束をまたうっかり隅に押しやりそうになりながら、
私はもう一度その声が自分を呼ぶのを待った。

「先生ー?いないんですか?」


声にわずかに不安の色が混じる。
…もうほんの少し。呼んで欲しかったけど。
このまま踵を返されでもしたら、たまったもんじゃない。

私はこみあげる笑いをなんとか飲み込んで、
鍵の開いたままのドアに顔を向けた。


「外出中」

「そうですかー」


カタン。

後ろを向く足音。
私は思わず椅子から立ち上がる。
──本気にする!?
それとも、機嫌を損ねたか。
何にせよそのまま帰す訳にはいかない。
慌てて入口に駆け寄って、ドアノブに手をかける。

思いきり引っ張ったドアの、すぐそばに天野は立っていた。
私達はほとんど同時に目を丸くした。


「せっ」
「あまの、」

「いるじゃないですか!」

「遅い」

「だっ、新年早々からかわれるなんて思──」

わないじゃないですか、
の声は、ぜんぶ腕の中に消えた。
私の「遅い」が何も突っ込みの速さを言ってる訳じゃない事に、この娘は気づいてるのかどうか。

「あの」

「仕事は?」

「…終わりました」

「いられる訳?」

「え?」

「ここに。少しは」

期待混じりの声音が伝わってしまったらしい。ようやく表情が緩んだ気配がして、私の肩の辺りに顔が埋められる。
珍しく抱き返してこない事にほんのちょっと物足りなさを感じながら、それでもそっと髪を撫でる事にした。
★ドラマ系 > きらきらひかる >
┗天野×杉F02
作者:不明
◆キャスト
天野ひかる…深津絵里
杉裕里子…鈴木京香
甘い匂いが鼻先をかすめたのは、それから少ししてからの事。
腕を緩めて 体を離すと、
…さっきは気づかなかった。
その手からのぼる白い湯気。
紙コップの中身が甘酒だって判ってすぐ、抱き返してこなかった理由に気づいて思わずホっとする。
成程、ね。


「…それ?」

「甘酒です」


見れば判る、だなんていつもの私なら言う所。
言わなかったのは、
言えなかったのは、
ほら。今日がこんな日だから。
言い訳にするにはなんて絶好の日。
生まれて初めて今日この日、おめでたい気分になれた気がする。

杉先生って甘酒飲めますか?」

「知らないで持って来たわけ?」


呆れて笑うと、天野は目をそらして泳がせた。


「えっと、その」

「飲むわよ。割と好きな方かもね」

「──もぉ」


相変わらず微笑ましいふくれつら。

思わず、
悪戯ごころ。

少し声色の違う「好き」を、もう一度。
少し首を傾げて囁くと、意図に気づいたのか否か。
天野が不思議な表情でこっちを見つめる。

「あのー…」

「好きよ?」

「そ、そっ、そうですか?ならこれ──」

「天野」


背けようとする顔を、頬に手を添えてゆっくりこちらに向ける。
恐る恐る、天野が目だけで見上げてきて、


「好き」


みるみる朱を帯びる頬。
指先にふわりと伝わり始める熱。

なんだかもう、どうしようもなく。いとおしくて。

くるくるかわる表情を眺めながら、止まらなくなってきた自分に今さら気がつく。
止めようとも思わないけど。


「天野。駄目?」

「へっ?」


一瞬揺れた瞳が、またこっちを見上げる。

「まだ熱いのね」

コップを持つ手に手を重ねながら、鼻先が触れるくらいに近づいて。じぃっと瞳を覗き込む。
私を押し戻すでもなく、目もそらせなくなっている天野が、こくりとのどを上下させたのが判る。


「そりゃあ…いれ、いれたてですから」

「そ。なら少しは大丈夫よね」

「えっと」

「ねえ」


もう一度。


「…駄目?」

視線を、
捕えた

「──」

一瞬の間。
長い睫毛を伏せたのを肯定と受け取って、
甘酒よりも先にそれにありついた。

離れた口唇。
ふっと頭に浮かんだのは、柄にもない虫の知らせ。

私が思わず笑みを浮かべたら、天野が怪訝そうに首を傾げて見上げてくる。


「先生?」

「何」

「なに笑ってるんですか?」

「飲まなくて良かった、と思って」

「へ?」

「べつに?」


コーヒーなんか飲んでたら、この味は判らなかった。
なんて、言える訳はないけれど。

「ちょっ…どういう意味ですか?」

「気になる?」

「はい。気になります。教えてください」

「…。お断りよ」

「なっ」

さっき。
ほんのり舌先に感じた味は、甘酒。

「ほら。冷めるわよ。くれるなら早く頂戴」

「もう、なんなんですかっ?人がせっかく──あっ」


それは彼女がきっとほんの一口だけ、味見した証拠。

「お先に」

気づかないフリしてあげる。
から、

「…もー」

そう。その顔。
もう少しだけ、笑って、
ここにいて。
★ドラマ系 > きらきらひかる >
┣天野×杉G01
作者:リン
◆キャスト
天野ひかる…深津絵里
杉裕里子…鈴木京香
「───せ。先っ、生っ!」
「…聞こえてるわよ。何?」
「聞こえてるなら反応くらいしてくれたっていいじゃないですか!」

憤然と抗議してくるしかめっつら。
ちょっと仕事に集中してただけなのに、これだ。

「あなたねぇ」

鼻先に指をつきつけて、私は軽く天野をにらみあげた。

「先生先生って、その呼び方止めてっていつも言ってるでしょう」
「イヤです。先生は先生ですから」
「駄目。却下。不愉快。今この瞬間から止めて欲しいわね」
「またそんなこと言ってー…いいじゃないですか、呼び方くらい好きにさせてくれたって」
「イー、ヤ。…天野」

どうも今日は譲りそうにない気配を感じて、私は先手をうつ事に決めた。
天野が何か言おうと口を開く前に、手元のノートパソコンを閉じがてら。もう一度天野を見上げる。

「良い?次先生って言ったら、今日のランチあなたおごりなさい」
「なっ!何考えてるんですか、先──」

むぐっと両手で口を覆う天野。
…こういう所。素直で可愛いのだ。
今にも頭を撫でてしまいそうな衝動をなんとか堪えて、私は不敵に微笑んでみせた。
白いほっぺたがぷぅと膨れた。

もうっ、何っ!?勝手な事ばっか言ってー──…」

ぶつぶつ言いながら席に戻って行く背中を見送りながら、こっそり吹き出す。
いつの間にか私のそばの机で顕微鏡を広げ始めた栄子が大げさなため息をついた。

「あんたねぇ。別に天野に恨みだ何だってあるわけじゃないんでしょ?も少し可愛がったげたっていんじゃないわけ?」
「あら。可愛がってるわよ。十分過ぎるくらいね」
「あっはは…あぁ〜あ、カワイソウなあ〜まの」

言いながら笑って顕微鏡覗いてるんだから世話はない。

「でもねぇ杉、そんなに嫌い?センセイー、って」
「好きじゃないわね。黒川、私いつかあなたにも言ったわよね、」
「"医者同士が先生って呼び合うのは虫酸が走るの"?…頑っ固ねぇ〜」

ケラケラ笑う栄子を一瞥してから、ふぅとゆっくり肩を回す。
ランチにはまだ少し早い時間。
これからちょっと天野の仕事を手伝ってやろうか。
あの天野の事だからきっとちょうど良い時間になる頃には、うっかり口を滑らせてるに違いないのだ。

「…ッ……!」


口を押さえて、目をまんまるに見開く天野。
ふと見やった時計は12時ジャスト。
本当に素晴らしいくらいの頃合い。
栄子を交えて会話をしていたら、いとも簡単に天野は「先生」と口にした。

あんまりおかしくてつい笑ったら、口を押さえたままの格好で天野は必死に首を振った。

「ちがっ…、違います!違うんです、今のは!」
「何が?」
「だからその…わたし、先生じゃなくて!宣誓って──」
「ダジャレじゃないのよ」
「! そんなつもりじゃ!」
「はいはい。良いから大人しく負けを認めるのね」
「ひどいですよ…」

うなだれる天野は多分、本気でランチをおごるつもりだろう。

そんな可愛い反応ばっかりするから。つい、いじめたくなってしまう。
天野にしてみたら良い迷惑に違いないんだけど、あなたのせいなんだから。仕方ないでしょ。

「…あんまり高いのにしないでくださいね」

恨めしげに見上げてくる天野に、にやりと唇を持ち上げてみせる。
ご愁傷様、なんてぽんぽんと天野の肩を叩く栄子を横目に見やりながら、
今日の所はコーヒー一杯で許してやっても良いかと思った。

オゴリはコーヒーだけって判ってホっとしたのか、さっきの私の意地悪なんかケロリと忘れたように。
私の話に聞き入りながらニコニコとオムライスを頬張る天野を呆れて眺めながら、ゆったりと煙を吐き出す。

「でも先…あの、どうしてそこまで毛嫌いするんですか?」
「毛嫌いってあなた、大げさな人ねぇ」
「…先生。わたし、何も皮肉で先生って呼んでるわけじゃないんですよ?」
「判ってるわよ」
「じゃあ──」
「でも嫌なの。別な呼び方にして。悪いけど」
「別なって…う〜〜ん」

もぐもぐしながら唸る天野に、私は補足を加える。

「そもそも天野、私達そこまで歳の差ないでしょ。それに私には先生じゃなくて、"杉裕里子"って名前がある」

その言葉に、天野が私を見つめる。
何を言おうか考えあぐねている様子で、オムライスをつつくフォークをもてあそんで。

そろそろ、ホントの意図に気づいてくれた?

「じゃあ──」
★ドラマ系 > きらきらひかる >
┣天野×杉G02
作者:リン
◆キャスト
天野ひかる…深津絵里
杉裕里子…鈴木京香
じゃあ?
ほんの少し、身を乗り出して、次の言葉を待つ。

「先生が、そんなにイヤって言うんでしたら」
「何よ」
「…」
「…」

少しの沈黙。
意を決したように開かれた口から飛び出したのは、


「………すぎさん」




私は力いっぱい吹き出した。

「なっ!なんでそこで笑──!」
「…っ」

もう、止まらない。
また頬を膨らませるのにさらに笑いを誘われて、むせて、涙目になりながらお腹を抱える。
隣で怒りながらも背中をさすってくれた天野のお陰でようやく落ち着いてきた頃には、その天野も笑いをこらえていた。

「あなた……、言うに事欠いて、…杉さん?」
「だって他に思いつかなかったんですから…、っふふ」

静まり返ってはいないまでも、それなりに静かな喫茶店の一角。
一緒に笑いを噛み殺しながら、ちょっとだけ残念な気持ちを奥にしまいこむ。

もしかしたらほんの一度でも、話の勢いで、裕里子、って呼んでくれるんじゃないかって、思っちゃった私が馬鹿だった?
やっぱり柄にもない事、考えない方が良いわね。

「…先生?どうかしたんですか?」
「別に。どうもしないわよ。あー、呆れた」


名前はまだ、早いか。

それにしても杉さんはないわよ。天野。

「やっぱり、先生は先生が一番です」
「…あっそ」


ドキドキして損した。
でも、そんな天野がやっぱり愛おしくて。
これが惚れた弱みってやつな訳ね、なんて思いながら、並んで歩きつつ盗み見る横顔。
いつか。いつかその口から名前を呼んでくれたら。
全く、いつの事やら、だけど。


「あっ!」


天野が急に立ち止まって、すっとんきょうな声をあげた。


「今度は何」
「先生、裕里ちゃんなんてどうですか?」
「…。馬っ鹿じゃないの?」


天野がまた頬を膨らませる。
今日はよく膨れる日だ。

「もぉ〜。ひどくないですか?その言い方〜」
「率直な感想言っただけでしょ。………ひかる」

不意に。
呼んでみた名前。
ぴくんと反応した天野がこっちを向く。

「…、」
「だった?あなたの下の名前」
「そうです、けど…」
「ふぅん」


変な先生、って唇を尖らせてまた隣に並んだ天野の耳が真っ赤に染まっていたのは、寒いからだけじゃきっとない。
──呼んで貰うのはまだ早いけど。
私が呼ぶなら出来るじゃない?
これでしばらく遊べそうだ、そう思ったら、なんだか楽しくなってきた。

医務院まではまだ遠い。
もう一回呼んでやろうかと様子を伺いながら、のんびりと並木道を歩いていく。


昼下がりの今日の空気はいつもより少し、温かい。
★ドラマ系 > きらきらひかる >
┣天野×杉G12
作者:リン
◆キャスト
天野ひかる…深津絵里
杉裕里子…鈴木京香
連日徹夜の疲れもようやく取れて、久々の休日。目覚めたのは正午過ぎ。
眠るっていう行為はやっぱりそれなりに体力のいるもの。
ご多分にもれず少しだけだるい身体を起こしてリビングへ向かうと、窓辺にふくれつらを見つけた。

──少し、寝すぎた?

せっかく泊まりに来たのに悪い事をした。
それなのに、寝かせておいてくれるいじらしさ。
私は柄にもなくちょっと(本当に、ほんのちょっとだけれど)嬉しくなって、窓辺に座りこむ細い背中を後ろから抱き締めた。
天野は眉を寄せたままの顔で私を見上げた。

「見てください!このひどい天気」
「え?」
「昨日見た天気予報、快晴って言ってたんですよ?わたし、この目でちゃんと見たんですから」
「ああ…そう」
「そうですよ!あー、もー、あったまくるなぁ!」

そう嘆きながら恨めしげに雨空を見上げる天野を、複雑な気分で見下ろす。
この娘は私がいつまでも寝ていた事に腹を立ててるんじゃなくて、外れた天気予報に怒ってるってわけ?

…呆れた。

聞こえないように小さく溜め息を吐き出す。
何に呆れたって、天気予報ごときに腹を立てる天野に。
自意識過剰な自分のおめでたい発想に。

腕を離そうかと思ったけど、何しろこうしてくっついたのは他でもないこの私。
ここで目に見えて不機嫌にすればこの娘の不機嫌を煽るのは明確で、何もこんな冴えない天気の時に気まずい雰囲気にはしたくない。
せっかくの休日なのだ。


そう思いとどまったのは、どうやら間違いではなかったらしい。
私に抱き締められるままになっている天野が、ふいっと視線を落とした。

「………先生も起きてこないし」

ぼそぼそと。
雨の音に紛れて、耳を澄まさなければ聞こえないくらいの呟き。
自意識過剰なんかじゃなかった事を知る。


「悪かったわ」


私が素直に謝った事に素直に驚いたらしく、ポカンと口をあける天野。
失礼極まりない。
思うのに、どうしてもしかめつらが作れない。
なんとも言えない表情で言葉を探しあぐねていると、腕の中で天野はふわりと頬を綻ばせた。

「朝ごはん、なに食べたいですか?」
「もう朝じゃないでしょ」

さすがに、と私が苦笑してみせても、天野の綻んだ表情はかわらないまま。

「先生は今起きたんですから、今から朝なんです」

おどけてわざと得意気に、それでいて自分でも笑いを堪えながら、私を見上げてくる天野。
今度こそ完全に頬が緩む。
今日はもう、それで良い。


「おはようございます」


にっこりする天野に、うん、としか返せなかったのは、また柄にもなくつい額に唇を落としていたから。

みるみる頬を真っ赤に染めて。
せわしなく耳に髪をかける天野に、ほのかに悪戯心。
食事はもう少し後でも構わない。
★ドラマ系 > きらきらひかる >
┗天野×杉H01
作者:不明
◆キャスト
天野ひかる…深津絵里
杉裕里子…鈴木京香
[ホントノキモチ]

「ちょっと〜あれいいの?」
さっきから黒川がしきりに綾小路君をけしかけている。
これみよがしに聞こえるくらい大きな声で。
何もそんなに騒がなくても… はいはい、わかってるわよ。
ホントは私に言いたいんでしょ?

「今から食事に行かない?」
河野が天野を誘ったとき、別になんとも思わなかった。
きっと天野は断るんだろうなって漠然と思っていたから。

だから天野の返事を聞いたとき、正直驚いた。
多分、医務室にいた全員が驚いたはずだ。
きっとみんなどこかで私と同じ思いを抱いていたはずだから。
天野が誘いを受けるわけがない。だって天野は…

パタン…
2人が出て行く扉の音でようやく我に返った。
それくらい私は呆然としていたのか。
こんなことで我を忘れてしまう自分が情けなくて苦笑してしまう。

 …ダッテアマノハワタシノコトガスキナノダカラ…

吐いた煙の行方を眺めながら、今だ苦笑は止まらない。

だって自分のうぬぼれに気づいた時、ホントノキモチに気づいたのだから。
★ドラマ系 >
ハケンの品格
■放送期間:2007年1月10日〜3月14日
■NTV系
■主な登場人物
大前春子…篠原涼子
森 美雪…加藤あい
里中賢介…小泉孝太郎
東海林武…大泉洋
黒岩匡子…板谷由夏
★ドラマ系 > ハケンの品格 >
┗春子×美雪A01
作者:◆ze3j4io4vc
◆キャスト
大前春子…篠原涼子
森 美雪…加藤あい
[帰社時]


美雪:春子先輩、今夜空いてますか? 先輩に相談事があるんです。
春子:相談事なら他の人に当たってください。それじゃ。
美雪:待ってください、春子先輩!
春子:どうしてバスにまでついてくるんですか?
美雪:春子先輩にどうしても伝えたいことがあるからです。
春子:なら今ここでどうぞ。
美雪:人前では言いにくいことなんです。
春子:そのようなことを私に相談されても困ります。
美雪:いえ、春子先輩なら大丈夫なんです。
春子:どうしてそんなことがあなたに言えるんですか?!
美雪:とにかく二人だけで話をさせてください。
春子:すぐ終わるんですか?
美雪:はい。でも、お店が終わってからでいいです。それまで待ってますから。


[閉店後]


春子:で、相談て何?
美雪:その前に、先輩の部屋って音が外に漏れたりしませんか?
春子:防音は完璧です。
美雪:よかった。だれかに聞かれると恥ずかしいことなので。
春子:私には聞かれてもいいんですか?
美雪:春子先輩はいいんです。
春子:じゃあ、早く言いなさい。
美雪:その前に春子先輩はベッドに座ってください。春子先輩も立っていると話しにくいので。
春子:はいはい、わかりました。
美雪:あの、実は、私、春子先輩のこと好きになっちゃったみたいなんです。
春子:相談というのはそんなことですか?
美雪:はい。
春子:ふざけないで!
美雪:ふざけなんていません! 私は本気です。決心したんです。
春子:何を?
美雪:たとえ春子先輩が拒んでも、春子先輩を押し倒しちゃえって。
春子:ちょ、やめなさい! 一時の感情に流されるなんて馬鹿な真似は――
美雪:一時の感情じゃありません。私やっと気がついたんです。春子先輩が好きだってことに。
春子:あなたは里中主任が好きなんでしょ?!
美雪:それは違います。私、少し優しくされて舞い上がってたんです。本当に好きなのは春子先輩です。
★ドラマ系 > ハケンの品格 >
┗春子×美雪A11
作者:◆ze3j4io4vc
◆キャスト
大前春子…篠原涼子
森 美雪…加藤あい
[春子の部屋1]


美雪:今日の春子先輩の下着の色は黒なんですね。
春子:いい加減にしなさい! それ以上やると本気で怒るよ!
美雪:怒った春子先輩も素敵です。春子先輩、下着脱がせてもいいですか?
春子:いいわけないでしょ! 早くやめなさい!
美雪:でも、下着つけてると苦しくないですか? 私が楽にしてあげますよ。
春子:苦しくないし、楽にしてくれなくて結構です。
美雪:春子先輩、遠慮しないでください。春子先輩には会社でいつも迷惑かけてますから。
春子:そう思うなら仕事で挽回しなさい。こんなことされても私は嬉しくありません。
美雪:春子先輩だって脱いじゃえば――
春子:やめなさい!
美雪:痛っ。
春子:これ以上続けるのであれば、剣道四段の私を倒してからにしなさい。
美雪:そんなの勝てるわけないです。春子先輩、本気で嫌だったんですか?
春子:当たり前です。こんなことされて嬉しいわけないでしょ!
美雪:春子先輩、ごめんなさい。私、クビになる前にどうしても春子先輩に気持ちが伝えたくて。
春子:謝ればそれで解決すると思ってるの?
美雪:私どうすれば春子先輩に許してもらえますか?
春子:許してもらいたい?
美雪:もちろんです。春子先輩に嫌われたくありません。
春子:そう。
美雪:え、春子先輩、何するんですか?
春子:私にこんなことして無事に帰れるとでも思ってたの?
★ドラマ系 > ハケンの品格 >
┗春子×美雪A21
作者:◆ze3j4io4vc
◆キャスト
大前春子…篠原涼子
森 美雪…加藤あい
[春子の部屋2]


美雪:きゃ、春子先輩。
春子:今日は毛糸のパンツ履いてるんだ。
美雪:は、春子先輩、そ、そんなに触られると、私…
春子:あなたでもう何人目かな。私に告白してきた女性派遣社員。
美雪:わ、私が、は、初めてじゃ、な、ないんですか?
春子:こんな性格だったらもう誰にも告白されないと思ってたんだけどな。
美雪:春子先輩!
春子:でもあなたには感心したわ、森美雪さん。
美雪:春子先輩?
春子:私の部屋まで押しかけてきて押し倒そうとしたのはあなたが初めてよ。だからお礼してあげる。
美雪:え、春子先輩、そんな、立場が逆転して――
春子:綺麗な胸。
美雪:そんなに見ないでください。恥ずかしいです。
春子:恥ずかしい? あなたにはもっと恥ずかしいことしてあげるから。
美雪:(恥ずかしいけど、嬉しい)
春子:これでもうすぐには部屋から出られないわ。後悔した?
美雪:後悔なんてしてません。春子先輩にしてもらえるなら後悔なんてありません。
春子:しばらく服は着させないから。
美雪:はい。

その夜、森美雪の体の火照りが収まることはなかった。
★ドラマ系 >
ギャルサー
■放送期間:2006年4月15日〜6月24日
■NTV系
■主な登場人物
レ ミ…鈴木えみ
ナギサ…新垣結衣
リ カ…岩佐真悠子
ユリカ…矢口真里
サ キ…戸田恵梨香
北島進之助…藤木直人
★ドラマ系 > ギャルサー >
┗レミ×ナギサA01
作者:不明
◆キャスト
レ ミ…鈴木えみ
ナギサ…新垣結衣
ある日の日曜日、レミとナギサは、レミの家で二人だけの時間を楽しんでいた。
二人はレミの部屋のベットの上に並んで座り、他愛も無い話をしていた。

「ちゅっ」
突然レミはナギサの頬に軽くキスをした。驚いたナギサは、頬を押さえながらレミの方を見る。
「ナギサだってしたいくせに。折角久しぶりに二人きりになれたんだよ?お姉ちゃんも居ないし ねぇ・・良いでしょ?」
上目使いに、甘える様な声でレミはおねだりした。
ナギサは動揺しながらも平然を装い、レミの何時もの口癖を真似した。
「だって、Hしてるのを、帰って来たレミのお姉ちゃんに見られてみ?あー今日は二人で新しいパラパラの秘密特訓をしてるんだなーって、思われちゃうじゃん?」
ナギサはそう言いながらも目が泳いでいた。突然大好きなレミに誘われて、動揺を隠せないのだ。
レミはそんなナギサを愛しいそうに見つめ、「思わねーよ。」
耳元で優しく囁きながら、唇にキスをした。

レミに誘われ、自分が抑えられなくなってしまったナギサは、レミをベットに押し倒し、唇に、頬、首筋へと唇を夢中で落としていく。レミはナギサを優しく見つめ、頭を撫でながら
「ふふふ・・そんなに焦らなくても逃げないよ。」
ナギサはハッと我に返り、ちょっとバツが悪そうに「わ・・悪い」と呟く。
ナギサはレミの唇に、今度はゆっくりと唇を重ねた。お互いの舌が絡み合う。二人とも、お互いの温かくて柔らかい舌の感触に酔いしれていた。レミの唇から唾液が滴る。ナギサはレミの唇をねっとりとなぞった。レミは頭がボーっとなり、無意識にナギサの背中に回していた手にグッと力を入れた。
ナギサはレミの服をゆっくり脱がしていく。自分の服も脱ぎ捨て、お互いに下着だけの姿になった。
ナギサの細くて長い指が、レミのわき腹やおへそのあたりを優しく撫でる。
★ドラマ系 > ギャルサー >
┣レミ×ナギサB01
作者:139
◆キャスト
レ ミ…鈴木えみ
ナギサ…新垣結衣
ナギサ「レミ、くっつきすぎ」
レミ「良いじゃん別に」
ナギサ「良くねーよ」
レミ「なんで?」
ナギサ「だってよぉ…こんなベタベタしてるとこ他のメンバーに見られてみ?
あ〜ナギサさんとレミさんってネコとタチな関係だったんだ…って思われちゃうじゃん?」
レミ「思わ…れても良いけど?」
ナギサ「………なっ!そ、そこは『思わねーよ』って言うとこだろ!」
レミ「ナギサ顔赤いよ」

ナギサはレミの下着に手をかける。
しかし、申し訳程度にホックをつかみはするも、どうしてもその先に手が出ない。
ここから先は、ナギサ自身何回繰り返しても、どうしても慣れないのだ。
時々ナギサは、レミとこうしていても、今自分が見ているのはすべて夢のような気がしてくる。
たとえば、今レミの目が怪訝そうに自分を睨み付けて「何やってんの?」と軽蔑の言葉を投げかけたとしたら、
「ああ、やっぱりこれはあたしの妄想だったんだ」と納得してしまいそうな自分がいるのだ。
ナギサの中には今すぐにもっと触れ合いたい衝動と、何か失敗をして、大好きなレミに見捨てられたらどうしようという不安がある。
そんなことを考えながら、ぐずぐずといつまでも下着をいじっていると、手が震えてるのがばれてしまったのか、それともいつまでも伸びてこない手にじれたのか、レミがふ、と笑った。
「どうした?」
「わ、悪い」
そんなナギサに、レミは『お前さっきからそればっかり』と言うと、手のひら全体で頬を撫で、目に口付け、髪を指でとかしながら、そっと両腕を回してナギサのブラジャーをはずしてくれる。
そして、
「好きだよ」
と最高のタイミングを見計らったかのように口にするのだった。

一番聴きたかった言葉を聞いて泣きそうになっているナギサに、さらにレミは彼女の下着もそっとはずし、その身体をぎゅうっと抱きしめた。
「あたしは、お前とこうしてるときが一番幸せなの」
「レミ……」
裸の肌が密着して、融けあうように触れ合った先から、お互いの体温が、幸せすぎるくらいの暖かさで伝わってくる。
「ナギサはちゃんとそれ、わかってんのか?」
レミはそこまで言うと、きつく抱きしめていた身体を少し離して、ナギサに向き直る。
そして、答えを待つような目で、ナギサを上目遣いで見つめるのだった。
「あ……」
しかし、その真剣さに、ナギサはうれしくてどうしようもないような、だけどそれ以上に驚いたような気分になってしまい、言おうとした言葉を、最後まで伝えることができなくなってしまう。
ナギサにとって、今自分を見つめているレミの姿は、普段からはまるで想像もつかないほど不安げで、ひどく頼りなげに思えた。
それを見て、ナギサは思う。レミも、自分のように不安になることがあるのだろうか。
自分のように、相手の気持ちを確かめたくて、だけどその方法がわからずに、結果として何もできないまま困り果ててしまうようなことがあるのだろうか。と。
もしそうなら、自分は絶対にレミを不安にさせたくないとナギサは思った。
この気持ちを伝えられないまま、誤解だけはされたくないと強く思ったのだ。
「わかってる……だからあたしも、……わかって、ほしい」
ナギサは決心したようにレミにそう言うと、レミはほっとしたように目を潤ませた。
ナギサはそれがそれがうれしくてたまらず、今度は自然に両の手をレミの頬に伸ばして、その唇に、ちゅ、と何度もキスを繰り返した。
そして、そのままレミの胸に手を降ろしてゆく。

「ん……」
まだ遠慮がちに動くナギサの指先に、それでもレミは少しずつ反応していく。
そんなレミの姿を見ていると、ナギサはさっきまでとは嘘のような速度で自分が理性を失っていっているのに気付き、少しだけ気恥ずかしくなる。
今の自分の手がいい例だ。最初はおずおずと触れているのが、次第に圧迫するように胸全体を包むようになり、何度も撫でて温度を感じ取ると、今度はつかんでその重さや柔らかさを確かめたくなる。
一体、自分はどれだけ貪欲なのだろうか。どれだけレミを欲しがれば、満足できるのだろうか。
「あ……っ、ナギサ……」
そんな、少しずつ激しさを増す愛撫の中、レミは片手は自分の口元に当て、快感をこらえるように指を噛みながらも、もう片方はナギサにしがみつくようにして腕を回して、震える指でナギサの頭を撫でてくれている。
ナギサはそれがうれしくて、レミに甘えたくて、ナギサはそっと頭をレミの胸に埋め、すでに痛そうなほど硬く張り詰めている乳首を、舌先でつつくように舐めてみる。

「ふぁっ……!」
密着したレミの胸は、かすかに香水の甘い匂いがする。
ナギサはしばらくその香りに酔いしれたあと、乳首の周りを円を描くように舐め、その次はそのものを口に含んで、片方の胸は手で遠慮なく揉みしだきながら、吸い付いたり、軽く噛んだりして、さまざまな方法で刺激してやる。
そのたびにレミは身体を後ろに反らせ、ベッドに頭をこすらせて、『あぁっ』、や、『んぅ……っ』といった、言葉にならないあえぎ声を、苦しそうな息のまま断続的に上げ続ける。
そこには、昔も今もずっとずっと好きでしょうがなかったレミが、あえぎながら、普段はまず見せないような表情と甘い声を、自分だけにさらけ出している姿があった。
ナギサはそれにたまらなくなり、すでに染みになるほどぐっしょりと濡れていた下着を降ろした。
「あ……」
必死で快感に耐えていたレミは、一瞬その動作に気付くことができず、そこが外気にさらされてからようやく、たじろぐような声を上げる。
離された下着からは、布に残された液体が、濡らしていた部分からぬくもりを惜しむように透明な糸を引いている。
「なあ、レミ……すげえ、濡れてるよ」
見たままを告げるナギサの言葉に、レミはすでに半分朦朧としたような表情を浮かべ、不意にやんだ愛撫がかえって苦しいのか、はぁ、はぁと涙目のまま眉を寄せている。
「これだけで、こんなに気持ちよくなってたのか?」
そして、そんな攻め句にさえ、レミは恥ずかしそうに、しかしうれしそうに、こくりと小さく頷くのだった。
自分がしたことで、レミがこんなにも感じて、こんなにも恥ずかしい姿を見せてくれている。
そう思うとナギサは、少しだけ自分自身が誇らしくなり、もっと気持ちよくさせてあげたい、と強く思った。
★ドラマ系 > ギャルサー >
┗レミ×ナギサB02
作者:139
◆キャスト
レ ミ…鈴木えみ
ナギサ…新垣結衣
ナギサはじっとりと濡れたその部分に手を入れてみる。
本当はもっと今の光景を眺めていたかったが、そんなことをすればレミに
「あんまり見るなよ……」と怒られてしまうような気もしたからだ。
「あぅっ……!」
ようやく触れてみたその部分からこぼれている愛液は、指ですくってもなお溢れてくるほど彼女の身体を湿らせていて、指を載せて軽く撫でるようにしただけで、レミの一番感じやすい部分を何度も簡単に行き来する。
その行為にレミの身体はすぐにひくひくと軽く痙攣して、なのにそれでも、レミは無意識に快楽から逃げ出そうとしてしまう身体を必死に押しとどめさせている。
その震えを、触れながら直に感じ取っていると、そうするのは初めてじゃないのに、ナギサはレミにとてもひどいことをしているような、申し訳ないような気持ちになる。
さっきまでとはまったく濃度の違う快感がレミを襲っているのだと思うと、ぎゅっと胸が詰まるような気さえして、自分が草どうしたいか、の前に、こんなことを自分がしていいのだろうか、と不安になってしまうのだ。
だけど、たとえ今の自分の行為にレミが本気で嫌がったとしても、ナギサは止めることはできないだろう、と思う。
それは、自分が、レミのことをたまらなく好きだから。
ここまで火のついてしまった想いを、こうすることで少しでもレミにわかってほしかったからだ。
指をその中で動かすたびに、レミは小刻みに身体を反らして甘い声を漏らす。
断続的にこぼれ落ちる、あっ、ああっ、という甘い声。
今ナギサが触れている、その部分を軽くこするだけで、レミはびくびくとつま先にまでその快楽が伝わっているようで、ナギサは無意識のうちに顔を横に背けているレミの表情をちゃんと見たくて、
もう片方の手を頬に置き、少しだけ強引にその顔をこちらに向かせる。
すると、てっきり何か憎まれ口を叩かれるかと思ったら、レミは涙のにじんだ目を細めて、「気持ちいいよ……」
とナギサににっこりと微笑んだ。

しかし、そんな風に微笑んでみせるレミだったが、ナギサがまた指を滑らせ、その部分をいじると、また「あっ……!」と身をよじらせて涙をこぼす。
その光景を見ていると、ナギサは今レミが自分の手で、こんなにも簡単におかしくなってしまうのだ、という事実に征服感をかき立てられ、頭の、いや全身の血が逆流していくような激しい欲望に襲われる。
そして今度こそ本当に、自分の理性のたがが壊れていったのを感じた。
ナギサは自分の衝動を抑えきれず、レミの両足をふいに無理やり深く山なりに折ると、その間にひざまずくようにして、顔をうずめてゆく。両ひざの裏側を持ち上げるようにして手で押さえると、レミは少しだけ驚きながらも小さくうなずいて受け入れてくれる。
ナギサはそれに本格的に許された気分になって、夢中でレミのすっかり膨らんで大きくなっている部分を舐めた。そのたびにひくつく身体は、大きな声こそ出さないが、すでにレミがたとえようもなく感じきっているのを表している。
そこでふと、ナギサは腕をつかまれたような、小さな圧迫感に気付く。
目を上げると、レミはその白く長い指でナギサの腕を弱く握り、愛撫に夢中になっているこちらを、切なげな目をして見つめていたのだった。
「……きて……?」
ごくんと唾を飲み込む音がしたのが、恥ずかしいくらい自分でもよくわかった。
もう、『いいのか』、なんて聞いている余裕さえなくて、ナギサはみっともないくらい即座に、レミの身体を引き寄せ、彼女のそこに自分の身体をあてがってゆく。
「あぁ……っ!」

ふたりで重ねた、今身体の中で一番暑くなっている部分は、こすれあうたびに、くちゅ、くちゅと恥ずかしくて、でもうれしい音を立てる。
ナギサは、レミの身体が少しでも気持ちよくなるよう、身体をずらして、足を絡め、少し自分には無理な体勢になるくらい、ぴったりと身を寄せる。
するとお互いの胸があたって、とてもやわらかくて暖かい気分になるのがうれしかった。
「ああ……好き……ナギサ、好きぃっ」
抱きしめて交差した顔の耳元で、さえずるようにレミが声を上げる。
「あたしも、だ……」
ナギサはその身体をぎゅっと抱えながら、すでに意識が飛んでしまいそうなほど感じている頭の中で、ふたりで一緒に気持ちよくなれるなんて夢のようだ、と、ぼんやり思う。
何度も強く感じる部分を往復するうちに、さっきから指を組むようにしてつないでいた両手に力が入る。
それはもう限界が近づいているのだ、と自分の身体に伝えていて、ナギサは抱き合っていた身体を少し離して、レミをそっと押し倒すと、その顔を見つめながら、再びゆっくりと重ねた部分を動かした。
「あっ……!」
握った手から伝わる、絶対の信頼感と幸福感。
登りつめた後は、またふたりの身体は離れてしまって、ひとつになっていた状態から、ふたつの別々のものに戻ってしまうだろう。それでも今は、この瞬間の幸福を感じあっていたかった。
達してしまうぎりぎりの快感をこらえながら、ナギサは一番愛しい人に一番伝えたい言葉を言うために、ゆっくりと口を開く。
「好きだよ……」
その瞬間、ナギサは、自分の身体が宙に浮いていくのを感じた。

ふたりとも達してしまってから、しばらく抱き合ったのち、ナギサは離れて、服を着ようと身体を起こしかけた。
「レミ、そろそろ……」
しかし、それでもレミは身体を離そうとせず、ぷるぷると首を振る。
「……でも、おまえの姉ちゃんが」
帰ってくるよ、とナギサが言い終える前に、レミは両手をナギサの口元にあて、そっと黙らせると、上目遣いですがるようにナギサを見つめた。
「いい。見られてもいい。あたしはばれちゃってもいい」
「レミ……」
ナギサは返事の代わりに、レミをそっと抱きしめる。
おでこをぶつけて、キスを繰り返すと、レミは子どものような声を上げてうれしそうに何度も求めてくれ、ナギサの心をどこまでも満たしてくれる。
そうしてそのまま、いつしか二人は溶けあうように、幸福な眠りに落ちていった……。
★特撮系 >
特捜戦隊デカレンジャー
東映特撮テレビドラマシリーズ「スーパー戦隊シリーズ」第28作
■放送期間:2004年2月15日〜2005年2月6日
■テレビ朝日系
■主な登場人物
デカイエロー(礼紋茉莉花)…木下あゆ美
デカピンク(胡堂小梅)…菊地美香
デカレッド(赤座伴番)…載寧龍二
デカブルー(戸増宝児)…林剛史
デカグリーン(江成仙一)…伊藤陽佑
デカスワン(白鳥スワン)…石野真子

★公式サイト
★特撮系 > 特捜戦隊デカレンジャー >
┣茉莉花×小梅A01
作者:むらさめ
◆キャスト
茉莉花(ジャスミン)…木下あゆ美
小梅(ウメコ)…菊地美香
[YOU ARE LOVED]

「お弁当くっ付いてる」
「うぐ(いいよ)」
「だめ、レディがお行儀悪いわよ」
「もう、自分で取るよ、いいから」
やっと見せてくれた。
嬉しそうにがっつきながら、ひさしぶりに子供みたいな屈託無い笑顔を見せる。

〜〜 〜〜

突然恋が終わっちゃう事は、往々にしてある。

ちょっと前に、ウメコはセンちゃんとさよならした。
理由は、知らない。
土砂降りのその日の夜遅く、何度も鳴り響くインターホンに叩き起こされてドアのロックを解除した。

「何方様で?」
こんな事するのは誰だかだいたい目星は付いてたけど。
「・・・・・・」
ビンゴ、やっぱりだ。
びしょ濡れの私服で思い詰めたような表情。
そして、震える瞳と唇で何があったのか、だいたい理解できた。

「何じゃらほい・・・?」
私がずっと見つめ続けたら、彼女は胸に飛び込むように抱きついて、しゃくり上げて泣き出した。

それから暫くの間は、元気な「ウメコ」で勤務をこなした後、私の部屋で「胡堂小梅」に戻って泣き続けた。
恋の痛手・・・ううん、辛い事から立ち直る方法は、気が済むまでたくさん泣く事。
そして立ち直るのは私じゃない、彼女自身。

だから黙って見守って、時々頭を撫でたり背中を擦ったり、抱き締めたりして慰め続けた。

〜〜 〜〜

「ねぇジャスミン」
「何じゃらほい」
「だぁ〜〜〜〜いすきだよ」

晩御飯を終えて洗物をしてるときに、ウメコは後ろから私に言ってくれた。

「またまた、そんなご冗談を〜〜」
「ホントだもん!ジャスミンとキスしたっていいもん!」

だぁ〜〜〜〜いすき、か。
私だって、ホントだもん。
ウメコがだぁ〜〜〜〜いすきだもん。
キスしたっていいもん。
キスだけじゃなくてもいいもん。

本音が言えないもん。

ウメコは友達で、パートナーで、かけがえのない大切な存在。
その気持ちは地球署に配属されて、彼女に初めて出逢った時から変わらない。
持って生まれた『自分の力』を理由に蔑まれ続けてずっと他人に心を開けなかった私に、最初に笑顔を投げかけてくれた。
いっぱい、じゃれてくれた。
そんなウメコが大好きだから、センちゃんと付き合い始めた時は自分の事みたいに喜ぼうって決めた。
幸せな笑顔を見続ける事が出来るなら、これでもいいって思った。

だけど、それは嘘。

センちゃんと少しずつ仲が深まっていく代わりに私から少しずつ離れていく・・・そんなのが嫌だったから「ウメコと私は女同士だから恋人になれない、だから私はウメコに想いを伝えちゃいけない」って、呪文みたいに心に刻み込み続けた。

短くなった髪の毛は、その証拠。
「デザートだよ・・・ん?」

あれ?
応答が無くなった。
リンゴ剥く手を止めて振り向いてみると、ウメコはいつの間にかこたつの中で船漕ぎをはじめてた。
疲れたんだろうな、ずっと泣き通しだったもん。

「ニンともカンとも」
小さい身体をそっと抱きかかえて、横たえる。

目尻が光ってた。
それでもとても穏やかで、優しい寝顔だった。
私の手まで握ってる。
強く握ってる。

・・・ねぇ、今どんな夢見てる?
センちゃんの夢?
私の夢?
この邪魔臭い革の布切れさえ取っ払っちゃったら、どんなに楽だろ。

夢でも、逢えるよね?

「あしたも、笑ってね」
灯りを消して、頭の下に膝枕を布いた。
★特撮系 > 特捜戦隊デカレンジャー >
┣茉莉花×小梅A02
作者:むらさめ
◆キャスト
茉莉花(ジャスミン)…木下あゆ美
小梅(ウメコ)…菊地美香
定刻よりちょっとだけ遅れてブリーフィングルームに入る。
十二秒の遅刻、爽やかな朝。
私達地球署スタッフの居住スペースはデカベースの中にあって、跳んでも八分歩いて五分。
だからお寝坊でもしない限り、滅多な事じゃ遅刻なんてナンセンス。

「あ、おはようさん」
「おはよう」

この週のシフトはお昼がホージーとウメコと私、夜がセンちゃんとテツ。
ボスは出張、スワンさんは研究室、テツは別件で席を外してて、ホージーとウメコはまだ入ってない。
つまり要するに、今ブリーフィングルームに居るのはセンちゃんと私。

「五時から男、お疲れさん。もう引き継ぐよ、ほい」
「これはこれはどうもどうも」

インスタントのコーヒーを煎れてセンちゃんに手渡す。
何口か啜ってから、間が空く。
別に空けたくて空けてるわけじゃない、ファイル整理やら雑務で自然と会話が無くなる。

「ジャスミン・・・ウメコどう?」
先に口を開いたのはセンちゃんだった。
いつも通りの茫洋とした感じの口調だった。
「ん〜・・・そうさなぁ、もういいんじゃない?やっぱ立ち直り早いから・・・」

「迷惑だったんだよねぃ、はっきり言って、さ」

私が問いに答え終わらないうちに、センちゃんは冷たく言い放った。
まるでゴミでも捨てるような感じだった。

一瞬、耳を疑った。
センちゃんは皆に優しくて、彼女だったウメコにはことさら優しかったんだと思う。
二人に何があったのかなんて知らないし、知りたくもない。

穏やかで優しいセンちゃんがウメコをそんなふうに詰るのが、信じられなかった。

「迷・・・惑?」
「そう、迷惑。だって考えてみたら結婚詐欺に遭ったのだって、自分が油断したからでしょ?その寂しさを俺にぶつけられても困るんだよ。それに作る料理は不味いし、身体の相性だって・・・そうだ、ジャスミンがウメコの代わりになってくれるの?」

冷静になれば、いつもの彼の言動じゃないって事くらいすぐ分かる事なんだとは思う。
でもそんな事どっちでも良かった。
ウメコをバカにされた事に、私をバカにされた事に怒りが込み上げる。
センちゃんの顔なんて映らない。
目の前に映ったのは古ぼけた映画のフィルムみたいに再生される、いろんなウメコ。
はにかみ顔。
幸せそうな顔。
センちゃんを思いあぐねて魔法使いの兄弟の「芳香ちゃん」に相談しては頬を赤らめる顔。
振られて泣いた夜。
眠りに就きながら見せた涙。

ウメコの何もかもをめちゃくちゃに踏みにじったんだね、この人は。


ふうっ、とため息を吐いた後、センちゃんの頬に往復で平手をぶつけた。
それでも気が済まなくて、手袋を外してから床に思い切り叩きつけて叩いた。
しこたま引っ叩いた。
平手を拳骨に代えて、何度も何度も殴った。
多分誰かの事で感情がむき出しになったのは初めてだった。

――気は済んだ?――

叩く場所から声が微かに聞こえるけど、頭の中が煮え繰り返ってるからよく読み取れない。
自動ドアが開く無機質な音が割って入った後、泣き叫ぶような声が耳に入ってきた。

「ジャスミン、何やってんのよ!?二人とも止めて、お願い!!」
「いいんだ・・・」

いいんだ?
一体何がいいの?
卑屈な態度に余計でも怒りが込み上げてきた。
「センちゃんの事、微妙にじゃなくて激しく見損なった。殴られて済ませよう、って思ってるんだ?・・・ならお気に召すまま、メッタメタのギッタギタにしてあげる」

左手で昼行灯の胸ぐらを思いっきり掴む。
そうだよ、止めるつもりなんてこれっぽっちもない。
ウメコと私をバカにした落とし前はきっちり付けてもらう。
顔の形が変わるまで殴って蹴ってボコボコにして、土下座させる。
自分自身にそう言い聞かせた。

だけど私の暴走はあっけなく止まる。
無意識のうちに右手で握ってた彼女の掌が、妙に汗ばんでた。
次に視界に飛び込んだのは虚ろな眼差しと、立ってるのもやっとのふらついた小さな身体。

彼女の意識を読むより先に、冷静さを取り戻してた。

口を血で滲ませたセンちゃんと顔を見合わせる。
額を触ってみると物凄く熱い。

「ジャスミン・・・セン、さんも・・・やっと、おちついてくれた・・・」
彼女は力の無い声で、私に口を開く。
「メディカルセンターに連絡する、あとスワンさんにも」
「うん・・・具合悪い?しっかりして」
「へへ、こんなのへっちゃらだよ・・・だいじょうV・・・」

ウメコは安心したような表情を浮かべた後、錯乱しそうになってる私の腕の中に崩れ落ちた。
★特撮系 > 特捜戦隊デカレンジャー >
┣茉莉花×小梅A03
作者:むらさめ
◆キャスト
茉莉花(ジャスミン)…木下あゆ美
小梅(ウメコ)…菊地美香
彼女を背負って、センちゃんと一緒にメディカルセンターに運んだ。
付き添いでスワンさんも来てくれた。

診断結果は過労。
笑顔を見せはじめてても悩み続けてたんだと思う。
一緒に居た時間は多かったけど、私の知らない所で一人で泣いてたんだろう。
「はい、これ」

解熱剤の点滴が効いてベッドの上で寝息を立ててるウメコの横で、センちゃんはさっき私がフロアに投げ捨てた手袋を差し出してくれた。
人間ってのは本当に勝手なもので、クールダウンしちゃうとさっきまでの怒りが何処へやら。
取り乱した事の後悔と情けなさ、そしてセンちゃんに対して申し訳ない気持ちになる。

「・・・メンゴ。痛かった?」
「うん、痛かったよ。でも中々どうして、よくきくパンチとビンタでした、っと」
腫れた口元を緩ませた笑い顔は、元通りの優しいセンちゃんだった。


「・・・あれ?」
そうこうするうちに、ウメコが目を覚ました。

「ハウアーユー?目覚めはいかが?」
「アイムファイン・・・って、やだよ、注射?」
「点滴だよ〜ん。もうちょっと我慢の子。すぐ終わるから・・・」

会話が、途切れた。

ウメコの視線が私から逸れて、私もウメコから視線を逸らす。
すぐ隣に、椅子から立ち上がったセンちゃんが居た。
手袋をしてない素手のままで触れてるベッドのパイプを握ってる。
冷たい鉄棒越しに、何を考えてたのかが分かった。

さっき吐いた悪態、それは決して本心からじゃなかった。
センちゃんがウメコに対して持ってた気持ちは『彼女』じゃなくて『妹』。
そんな気持ちのまま、恋人の関係を続けることに悩み続けた。
このままの気持ちで接しても、一生懸命なウメコを傷つけるだけ。
それを悟ったセンちゃんが選んだ方法・・・自分ひとりで何もかもを背負って、ウメコを解き放つ事だった。
私がウメコに持ってた感情、それも全部理解した上で・・・わざと貧乏くじを引いて、決着を着けようとした。

SPライセンスのエマージェンシーコールが鳴る。

「ウメコ、よかったね。淋しがりだから、何があっても絶対に離れちゃダメだよ?」
何でそんなに優しい顔になれるの?
今さっき私はウメコの事、奪おうとしてたんだよ?

唇を噛んで椅子から立ち上がろうとする私の肩をセンちゃんはポン、と叩いた後、背中を向けて病室の扉を開けた。

「じゃ、出るわね。ここにシュークリーム置いとくわ、お見舞いよ」

黙って見てたスワンさんも出て行った後、涙が溢れた。
理由なんて分からない。
センちゃんを打ったことに対する罪悪感じゃない。
心の奥に閉じ込めてたウメコへの気持ちを誰かに悟られた事に対する悔しさじゃない。
ましてや、センちゃんからウメコを横恋慕しちゃう事への罪悪感なんかじゃ、決してない。

ただ、泣きたかった。

――泣かないで――

握り締めた私の手の甲に落ちた涙の滴から、ウメコの声が聞こえた。
目をやるとベッドから身体を起こして、私を見ながら泣いてた。
滲んだ視界から映ってる顔は、泣き笑い。
泣きながらムリして笑おうとしてるんじゃなくて、キラキラした笑顔に涙がくっついてきてる、そんな表情だった。

「何で泣くの?泣いちゃやだよ」
「ウメコだって、泣いてる・・・お岩さんみたいな顔してる」
「うるさいなぁ、そっちだって化粧崩れてるじゃん」

おどけ合いながら泣いた後で食べたシュークリームの味は、少しだけしょっぱかった。




五日後。
私は今、いつものパトロールコースをマシンドーベルマンで走ってる。
暖かい日差しが眩しくて、気持ちいいなぁ。
こういうのを「ピーカン」って言うんだけど・・・死語だっけ?

本当だったらテツとペアなんだけど、助手席に陣取ってるのは・・・

「ね、この桜餅おいしい。ジャスミンも食べようよ」
「ウメコさん、ミッション中です・・・あんまり食べると、ぶたぶたこぶたになるよ」

あれからもっといっぱい泣いて、元に・・・もとい、前よりも「良い子強い子めげない子」になったウメコ。
『しばらくは一緒に行動するように』っていう、ボスとスワンさんの命令だった。スペシャルポリスの元気印な彼女の事を、二人も二人でかなり心配してたんだと思う。

「ねぇ」
「何じゃらほい」
「ちょっと寄り道しよ?」

小さな海浜公園に差し掛かったくらいで、彼女は口を動かしながらウインドウの外を眺めて言った。
チラッと目をやると、空の色とは違う濃い群青色が広がってる。

「あらロマンチストさん。花より団子じゃないの?」
「いいじゃん!私と一緒やなの?」
「嫌じゃないよ〜〜だ」
「じゃ決まり!!デートしよ、デート」

そうだそうだと言いました、と・・・言う事、聞いてあげよっと。
★特撮系 > 特捜戦隊デカレンジャー >
┗茉莉花×小梅A04
作者:むらさめ
◆キャスト
茉莉花(ジャスミン)…木下あゆ美
小梅(ウメコ)…菊地美香
駐車場にマシンドーベルマンを停めて、海岸に降り立つ。
潮干狩りと防波堤で釣りをする人、それでも人は疎らでカモメの鳴き声と波の音だけが聞こえる。
海の家とかがあるって事は、夏場は賑わうんだろうな。
いつも通るところなんだけど、こうしてちゃんと見たことなかった。
「うんとこどっこいしょ」
砂浜に直に座り込んで、二人で海を眺めた。
会話も何も無い、だけどそんな時間がすごく幸せだった。

「はい」

桜餅を持って降りてた。
手袋のまま、小さなタッパに入った桜餅を摘もうとしたら、
「だめっ!!」
ウメコは叱り付けるように私に言った。

「お〜〜恐。なにゆえ?」
「なにゆえもへちまもない!手袋したまんまじゃ、お行儀悪いでしょ」

アジャパ、いつもはこんな事したって文句言わないくせに。
でもそうは言っても、手袋は私の大切なもの。
こいつが無いと、桜餅から「何か」を読み取っちゃう。

「仕方ないなぁ、なら・・・わたしが食べさせてあげる」

何が仕方ないのか分かんないけど、一人で納得してるし。

「ほらあーん」

葉っぱに包まれたピンク色の固まりを手にとって口に運んでくれる彼女に応じるように口を開けた。
いい匂いが口の中に広がる。
桜の葉の塩漬けに包まれた甘過ぎない餡と柔らかいつぶつぶの皮、そして春の薫り。

美味しい。

「わたしが食べさせたから、美味しいんだよ」
「ま、そう言う事だと日記には書いておこう。もう一個・・・・・・」

私がせがむと、ウメコはタッパの蓋を閉めてから手に触れてきた。

(え・・・?)
レザー地の冷たい手袋がゆっくり剥がれて砂の上に落ちる。
びっくりして、目が真ん丸になってる。
みっともない、ヘンな顔になってるのが自分で分かる。

「あっ・・・」
抵抗する気もないのに漏らした声を掻き消すように、裸になった左手に指を絡めて握られた。
子供みたいな無邪気な笑顔の上に帯びた微妙な憂いに、心臓が爆発しそうになる。
ずっとずっと、こうされたかった。
なのに、凄く胸が苦しい。
持ってる想いの全てを見透かされてるような気がした。

恥ずかしくて目を逸らす私の中に、彼女は入り込んできた。

頭の中に、言葉が響く。
何日か前、私に言ってくれた言葉。
嘘の無い、まっすぐで透き通った言葉。
そっか。
「ご冗談」なんかじゃなかったんだ。
ありがとう。
っていうか、もっと早くに手袋外してたらセンちゃんの事殴らないで済んだかな・・・?

「ジャスミン・・・」
「・・・・・・」

メンゴ。冗談、出ないよ。

瞳に涙が溢れて、零れ落ちるのとほとんど同時に・・・磁石みたいに唇を触れ合わせてた。
喉の奥に掛かるウメコの吐息が、少しだけ痛く感じた。
私の右肩に添えられた彼女の左手が、とても重たく、愛しく感じた。
さっき食べた桜餅の味がした。
桜餅なんかよりも、甘くて柔らかくて、優しい唇だった。

でも、唇も肩も手も震えてる私はそれが・・・唇だけのキスが精一杯だった。
唇を離して、今度は身体が重なる。
小さな彼女の身体は思ってたよりも力が強くて、半ば強引に身体を預けられた。
シャンプーの匂いでもコロンの匂いでもない、ウメコの匂いに包まれる。

「おあいこしよ」
「・・・?」
「今さっきジャスミンに『すき』って言ったよ。これでも勇気出したんだから。
今度はジャスミンから、わたしに言って・・・エスパーじゃないもん、わたし・・・」

背中に回った手が、優しく動く。
小さい子供でもあやすみたく擦ってくれてる。
私も、彼女も。
共鳴するように心が震えてるのが分かった。

ずっと、傍に居て。
離れちゃやだ・・・・・・


【あ〜ら、元気だこと・・・】

――――!!!!

ポケットの中から聞こえてきた声に反応して、どっちからとなくサッと離れた。

「スワンさん!!??」
二人でハモって声の主の名前を言った後、ライセンスを手に取った。

【こらっ、二人とも真っ昼間っから何やってるの?しゃきっとしなさい、しゃきっと!】
こんな事言ってても、怒ってるような感じはない。

スワンさんは皆のお母さん。
だから私も色んな相談事・・・いわゆる『恋の悩み相談』にも乗ってもらってた。
「あの、じゃ・・・」
【イエ〜ス、聞こえてたわよ。甘い囁きも、チューする音も!】
チューする音は嘘だとしても・・・なんてこと。
ぼうっとなりながら顔が真っ赤になって、軽い立ち眩みを起こしそうになる。
【ペナルティよ。お遣い頼まれてくれるわね、えっと〜・・・】
お遣い・・・それはちらし寿司の材料と雛あられ、白酒。
目をぱちぱちさせるウメコの横で今日の日付を確認すると、三月三日、桃の節句。
こんな仕事だから、日付の感覚なんて無くなっちゃうのも無理ないか。

【言っとくけど】
「はい?」
【ちらし寿司は、二人で作るのよ!?ワタシは研究所にお雛様出すから。じゃね〜】
二人で・・・っていうより、ウメコ料理出来ないから私が一人で作っちゃうような感じになっちゃうんだろうな。
用件を全部伝え終わると、スワンさんはさっさと通信の回線を切った。

「とりあえず・・・」
「ザッツライト、買って帰らないと」
「その前に、まだ聞いてないし。ジャスミンの・・・」

君って奴は。はいはい、分かったわよ。
ちょっと呼吸を整えて、息を大きく吸い込んだ。

「ウメコ、だぁ〜〜〜〜いすきだよっ!!!!」

海岸中に響き渡るような大声で『おあいこ』にした。

「わ、わ、ちょっ・・・ばかぁ!!」
「アジャパ、赤くなってる。こうして欲しかったんでしょ?」

いっぱい、笑おうね。
いっぱい、泣こうね。
センちゃんの言うように淋しがりだから、何があっても絶対に離れないし、離さないから。
カモメの鳴き声が、私達を少しだけからかってるように聞こえた。


これにて一件コンプリート。
メガロポリスに、サクラサク。
★特撮系 > 特捜戦隊デカレンジャー >
┗茉莉花×小梅A11
作者:むらさめ
◆キャスト
茉莉花(ジャスミン)…木下あゆ美
小梅(ウメコ)…菊地美香
[Sexual healing・・・?]


彼女は横たわったわたしに、覆い被さる。

細い指がポニーテールを掻き分けて、首にそっと掛かっていく。
ジャスミンは意地悪っぽく笑って、わたしが触れてほしい場所を探り当てていく。

背中、肩、腰・・・

「ぁ・・・っ」
「・・・気持ちいいでしょ?」
「・・・やだ、ょ・・・やっ、あ・・・」
「嫌よ嫌よも好きのうちって、知ってる?嫌なら止めるよ」
「ひあっ、きもちぃ・・・んっ!」
「もう一回聞くね、止める?」
「・・・いじわる・・・やめちゃ、やだ・・・」

「そうだよ、止めたら疲れ取れないよ?指圧の心、母心」
「ちょっと痛いから少し優しくしてよ」
「痛いトコが、凝ってるトコなの!我慢しなさい」
「痛いモンは痛いの!」
「わがまま言うなら知らない!」
「こっちだって!アッカンベ〜〜!」

こうして、わたし達の夜は・・・どうしようもないケンカで更けていく。
★特撮系 > 特捜戦隊デカレンジャー >
┣茉莉花×小梅A21
作者:むらさめ
◆キャスト
茉莉花(ジャスミン)…木下あゆ美
小梅(ウメコ)…菊地美香
[more]


じっと、手を見る。
ひい、ふう、みい・・・貼ったカットバンの数はこれで八つ目。
そんでもって、目の前には林檎と梨がどっさり入った籠が一つ。

「ウメコ、ネバギバ!!もう一個、ドーンとやってみよう!!」
「やだ、また〜?もう飽きたよ!」
うんざり顔のわたしを見ながら、ジャスミンはニコニコ笑った。

今日は非番。
『恋ゆえの勘違い』で痛い目にあったわたしを癒してくれたジャスミンに『告白』してから暫く経った。
あれから毎日、ジャスミンに料理を教えてもらってる。

ジャスミンは美人でスタイル良くて、捜査だって何だって・・・料理だって、燃えるハートでクールにこなす。
わたしは不器用で突拍子なくて、子供っぽくて、パイパイも無くて・・・って、それはそれ、燃えるハートはジャスミン以上。
センさんと付き合ってた時はちょっとだけ背伸びして、「大人の女」にあこがれたりもしてたけど・・・今にして思ったら、わたしらしくなかったと思う。

話がそれちゃったけど、とにかく料理上手になって何か美味しいものたべさせてあげたい。
何より気を使わないで一緒に居れるのが、とにもかくにも幸せ。


でも、どこの世界でも『教官』ってのは厳しい。

「めッ!!よそ見してるから指切っちゃうの」
一日中林檎と梨の皮むきじゃん、いい加減なんか作らせてよ!!

「あま〜い。ウメコ、この前何作ったか、言ってミソ??」

少しムッとした顔になりながら、ジャスミンは顔を近づけて膨れたわたしの頬っぺたを指で突付きながら言った。
「えっと、ハンバーグとグラタンと、スコーンだよ!」
「ハンバーグは?」
「焦がして真っ黒けにしちゃった」
「グラタンは?」
「生焼け」
「スコーンは?」
「粉の分量間違えて・・・がちがちに、固かった・・・」

思い出して口にしながら情けない。
確かにとんでもないものばっかりだけど、失敗は成功の元。
失敗しなきゃ、前に進めないし!

「小梅ちゃん、よいこつよいこめげないこ!♪それがアナタの、いいところ♪仕方ない、お手本見せてあげる。シチューでいい?」
「うんっ!シチューがいいよ、お腹ぺこぺこ」

くすっと笑って椅子から立って、冷蔵庫から材料を出してキッチンに立つジャスミンにくっ付いてわたしも一緒に立つ。
手袋はさすがに邪魔なのか外して、包丁を手にした。

「うわ、いつ見てもすごい!」
「あたぼうよ。鍛えてますから」

野菜の皮がつながったまま、スルスル剥けていくのに見とれる。
ほんとにすごいな。
あっという間に材料を切って、ルーと一緒に鍋に入れて火にかける。

「・・・・・・」

見慣れた横顔を見ながら、ふっと考えてた。
一緒に居るだけで楽しいからあまり意識してなかったけど・・・まだキスから先に進んでなかったんだ。

想いを乗せて触れたキス・・・それから、先。


包み込んでくれたのが、本当に巡り逢った大切な人がたまたま同じ女の子、ただそれだけ。
だから恐くない!・・・って言ったら、嘘。

本当は、ちょっとだけ恐い。
女の子同士で一線越えちゃうのって、どんな感じなのかな。
でも大好きな人に・・・ジャスミンに愛されたい。
わたしを好きになってくれてずっと見てくれてたジャスミンだってきっと同じように感じてると思う。
でももしかしたら、欲求不満みたくなってるのかな。
待たせちゃってたり、するのかな。

もしエスパーだったら、背中抱き締めるだけで、分かるのに・・・


「おやまあ、何ざんしょ?」

ふいに、胸の奥がキュンと痛くなって、細い肩に抱きついた。

「・・・どした?」
「ごめん」
「何が?」
「待たせてる?」
「は?何を?」

シチューより先にわたしから・・・って、そんな気が利いたこと、言えないけど。

「にゃはははは!!」
いきなり笑い出した、それも大声で。
「なっ・・・何よ!何か可笑しいわけ?」

「シチューより小梅を食べて、ねぇおねがぁ〜い、お・ね・が・い!」

しっかり読まれてる。
楽しそうにケタケタ笑ってるのを見てたら、自分の気持ちが恥ずかしいとかって思うのがバカバカしくなった。

可笑しいから一緒になって笑った。
こんなふうにちっちゃい子供みたいに笑うジャスミンは・・・世界中で多分、わたししか知らない。
だったらいいんだ、何知られたって。

そうだよ、もうカップルだもん。

あなたが本当の笑顔見せてくれたから、わたしも・・・・・・


背伸びして、トレーナーとボブカットの間に見え隠れする白い首筋に一回キスした。
笑い声が無くなって、コトコト鍋の音だけがするキッチンで、そのまま立ち尽くした。

「出来上がるまでちょっと時間あるね」
ジャスミンは深呼吸しながら腰に回してたわたしの手に、自分の手を添えた。
「あのねのね〜、っと」
相づちを打つわたしにいつもみたいに続ける。

「・・・離れてミソ?・・・」

それに反応するみたいに手を解いたら、くるっと向き直して。

ことばを交わす間もなしに、キスされてた。
★特撮系 > 特捜戦隊デカレンジャー >
┣茉莉花×小梅A22
作者:むらさめ
◆キャスト
茉莉花(ジャスミン)…木下あゆ美
小梅(ウメコ)…菊地美香
先にジャスミン、次にわたし、二回触りあった。
薄目になりながら、重なる唇。

「ね・・・え」
「うん」
「私達、ちゃんとしたキスまだしてない」
「うん・・・大人のキス?ベロチュー?」

おどけてるの?
冗談言ったって、お澄まししたってかっこついてないよ。

まっかっかになりながら舌を出してはにかんだ。

取り繕うような笑顔を見せて、また唇を合わせた。
深く、合わせた。

細い唇は、思ってるよりぷにぷにしてて。
ジャスミンの・・・じゃない、女の子の唇って、こんなに柔らかいんだ。
もうわたしだけのものなんだ。

「・・・んっ・・・」

鼻腔に届く甘酸っぱい匂いと一緒に、舌が口の中に入ってくる。
つるつるした柔らかい感触が、歯列を擽る。
誘い出されるようにわたしも舌を入れて絡めた。
とろっと、唾液が溢れて注がれる。
痺れちゃいそうに甘い、さらさらした唾液だった。

身体がかあっ、と熱くなって、中心から疼きが湧き上がっていく。


唇を離しても、ジャスミンはまだ瞼を閉じたままだった。

「ぁ・・・」
ため息みたいな小さい声の後で目を開いて、潤んだ瞳で見つめられる。

「レッツラゴー、カモン」
わたしの手を引っ張りながら、ベッドを指差した。
「そうだね、やっぱここじゃ・・・」
「オフコース。ご飯食べるトコじゃお行儀悪いから」

何もかも持っていかれそうなキスで、ちょっとだけ忘れてた。

そうだ・・・今から一線乗り越えちゃうんだ。

だったらベッドのほうがいいなって思いながら、首を縦に振った。

ベッドの前で、全部脱ぎ捨ててその場に放り投げた。
脱がせっこなんてする余裕ないよ。
わたしはデニムスカートとトレーナー、ジャスミンはローライズのパンツとシャツ。
その後、ブラジャーもショーツも全部とって裸になった。

一緒にお風呂入ったことだって何回もあるから、身体は見慣れてるのに・・・なんだか異様に綺麗に映った。


抱き寄せられて、肌をぴったり重ねながらベッドに倒れこんだ。
髪の毛は、少しシャンプーの匂いがした。
わたしの乳房に押し付けられた大きな胸のふくらみの奥が高鳴ってる。
ジャスミンの内面、見てる気がした。

好き。

泣き出しそうなくらい、愛しい。

頬っぺたにキスされて、耳元に顔が近付く。

「あの・・・灯り、消さなくて・・・いいかな?」
「消さないよ、ウメコの顔見えないから」
「うん、そっか・・・それと・・・」
「何じゃらほい?」
「シャワーしてないけど、汗臭くない?」

どうでもいい会話を押し殺すように口で口を塞がれて、頬っぺたにキスを落とされてから、首筋に顔が近付く。

「・・・汗なんて、気にならない・・・」

吐息だけの囁きの後で、耳朶を唇で挟んできた。

「ん・・・ぁあっ・・・」

ぴちゃ、ぺちゃ・・・濡れて泡立つ音が、生温かい感触と一緒に耳の中に響く。
胸元にゆっくり、ゆっくり擽るように指が動いていく。
さわさわ触ってやわく揉まれて、勃ち上がった乳首をそっと摘まれた。
それから摘まれた場所に口付けされて、キャンディみたいに舐められた。
右と左、片方ずつしゃぶられてから不規則に、舌と指がお腹を這いまわっていく。

「・・・ひあっ、あはっ・・・ん、やっ・・・あぁあん・・・」

おへその回りをくるくる舐められると、たまんなくなって声が上がった。

今、触られてる部分は、キスされてる部分は・・・ずっと触ってほしかった部分で、キスしてほしかった部分で、感じる部分。

悲しいくらい、全部読み取られていく。

いつも求めてくるだけだった『あの人』より、何倍も、何十倍も、何百倍も気持ちいい。
愛撫だけで意識が遠のきそうになってる。


「ウメコ・・・」
ジャスミンは顔を上げてわたしの名前を呼んで、太ももの間に右手を滑り込ませてきた。

何となくわかった。
指先からわたしを感じたいって・・・多分、男の人とのセックスみたいに、わたしを感じたいんだなって。
応じるように脚をちょっと開いた。

「・・・いいよ」
「いっぱいほしい」っていうのもおかしいから、言わなかった。

「ね」
「うん・・・」

「いっぱいあげる」

ベトベトになった入り口を押し広げられる。
くにゅっ、て音が聞こえるような感じがして・・・すっ、と二本の指が入り込んでいく。
「・・・ぁ・・・はぁあぁん・・・ん、っ・・・あ・・・じゃすみ、ん・・・」

柔らかい部分の溝を、一つずつ丁寧になぞられた後で一番奥まで入って、内側を擦られる。
ぷくんと膨らんだ突起を指の腹で押えられて、円を描くようにこね回される。
そんなジャスミンの指を、痛いほど締め付けてる。
自分でも信じられないような声を上げながら、上になってるジャスミンにしがみついた。

やけにくちゃくちゃ音がしてる。
そんなに、濡れてるのかな・・・

「・・・ふぅ・・・ん・・・ふ・・・」

わたしのそこに抜き挿ししてるジャスミンの噤んだ口に吸い付いてキスした。

「あん、あぁん、ひあぁっ・・・もぅ、だめ・・・!」

かき回してた指が、ゆっくり曲がってからもっと激しく動く。
肌が脈打ちながら大きなハレーションが頭の中に鳴り響いた後・・・・・・ジャスミンは折り重なるように崩れてきた。


「ごめりんこ」
ぼんやりしながらジャスミンを見ると、ぐったりしたままわたしの上にもたれ掛かって肩で息をしてた。

「ジャスミン、もしかして・・・」
身体が異様に熱くなってて、膝に当たってるそこはわたしのより濡れててベトベトしてる。
ダイレクトに伝わり過ぎたんだと思う。
いつもは手袋してるのに素肌でこんなことしてるもん。

「ウメコのいけず」

力のない声でわたしの鎖骨のすぐ下の辺りを指でなぞりながら言った後、顔が上がる。
虚ろで切なそうな顔。
それがどうしようもないほど色っぽくて可愛いから、抱き寄せて転がりながら今度はわたしが上になる。
「・・・おいでよ、はやく・・・」

その一言に導かれる。
さっきまでわたしを愛してくれてた右手を取って、手の甲にキスした。

「ふあ・・・っ」

指の一本ずつに舌を這わせて、自分の蜜を舐め取った。

「・・・いぁん、ゃ・・・」

指の股も指の腹も、爪の間も一つずつしゃぶった。

それから、左手も同じように舐めしゃぶってからおでこにキスした。
祈るみたいに固く閉じた瞼にキスして、そっと出された舌に舌を絡め合わせた。
キスだけで一つになっていくみたい。
舌も唇の裏も舐め回して尖った顎から首筋を舐め降りていくと、腰がくねって捩れる。
柔らかくて大きい胸の谷間に顔を埋めて、つうっ、と舐めておへそを吸い上げて、舌を挿し込む。

ジャスミンみたいに、上手にしてあげられない。
でも、わたしのやり方で気持ちよくさせてあげたい。

知らないところなんて、触れてないところなんて無いくらいに身体中にキスしてあげたい。

―もっと声聞かせてよ、もっと―

「はぁぁん・・・ウメコ・・・ゃあん・・・」

ことばを纏わせて唇や歯や舌で弄うのに比例して、声が甘く大きくなる。
もじもじ擦り合わせてる膝を割って、足を広げた。

ひくひく震えながら濡れてるそこは、すごく綺麗だった。
蜜があふれて太ももと茂みにべっとりへばり付いてた。


「ふ・・・ひああぁぁっ、あ、ん・・・やだぁ・・・」

両足を浮かせて入り口に唇をかぶせて、舌を差し出してくちゅくちゅこね回した。
花びらみたいな部分を一枚ずつ口に含んだ。
剥き出しになってぷっくり膨らんだ核にチュッと吸い付いたり、舌の腹で舐め上げたりした。
後ろのすぼまりにも、舌先で触れてなぞった。

「ひゃん・・・」

こっち、好きなんだね。
蜜の色が真っ白になって、ねばっこくなってるよ。
持ち上げた足がばたばたして、ふるふるしてるよ。

「・・・ら、めぇ・・・だめ・・・・・・」

だめって言っても、いやいやしても、凄く気持ちよさそうだよ?
もっと可愛い声聞きたくて、舌先を尖らせてチュッと挿し入れた。
次にする時、もっとお尻にキスしてあげるから・・・・・・

ぎしぎし軋むベッドの音、シーツを掴む音、ジャスミンのすすり泣く声と匂いが部屋に混ざり合う。
蜜の匂い、汗の匂い、吐息の匂い・・・頭くらくらしてる。
ジャスミンの左足から右手を離して、左手をつないだ。

「・・・ちょうだ・・・ウメコ、もっと、ちょ、だ・・・い・・・」

ぐいっ、と弓なりに仰け反って汗を飛び散らせながら肌を強張らせた後、ジャスミンの身体からゆっくりと力が抜けていった。
★特撮系 > 特捜戦隊デカレンジャー >
┗茉莉花×小梅A23
作者:むらさめ
◆キャスト
茉莉花(ジャスミン)…木下あゆ美
小梅(ウメコ)…菊地美香
二人でお風呂に入って汗を洗い流す頃には、シチューはできてた。
バゲットを用意してワインクーラーを作って、シチューを取り分けて『いただきます』。

「なんか、ごめん」
スプーンでじゃがいもを掬って口に運んで、わたしはジャスミンに謝ってた。
「は?」
ジャスミンはバゲットを千切りながら不思議そうな顔をしてた。
いきなり謝られちゃムリもないか。


ジャスミンに抱かれながら、センさんが無意識に頭を過った。
未練とか、そんな野暮ったくてダサいもんじゃなくて、もう痛くもなんともない『いい思い出』だけど、そうやって不意に・・・それもよりによってセックスしながら思い出しちゃう事、ジャスミンに対してすごく失礼だと思って。
わたしを凄く好きになってくれた人なのに・・・・・・


「何だ、そんな事か」

あっけらかんとした感じの声がする。
カラン、と床にスプーンが落ちる。
手を握られてた。
さっき手を握られるよりも恥ずかしい事してたのに、顔がぼわっと赤くなった。

「まだセンちゃんとさよならしてそんなに経ってないでしょ。思い出したりするのはそれだけウメコがセンちゃんに真剣に、一生懸命に向き合ってた証拠。そんな一生懸命なウメコ、大好きだよ?それに今日、私達はじめてで色んな事考えちゃうの無理ないし・・・」

嬉しかった。
なんか、今わたしすごく幸せなんだ。

胸が熱くなって、目を三角にしながら目の前のシチューを一気に平らげて、向かい合ってるジャスミンに顔を近づけた。

今すぐキスしたいの・・・言わなくてもわかるよね?

「ねぇ、早く食べて」
「待って、しっかり噛んで食べないと・・・」
「もっと解り合いたいの、ねぇはやく!!」

今から、もっともっと色んなことしようね.
色んなこと分かち合おうね。

あなたがだいすき。
★特撮系 > 特捜戦隊デカレンジャー >
┗茉莉花×小梅A31
作者:むらさめ
◆キャスト
茉莉花(ジャスミン)…木下あゆ美
小梅(ウメコ)…菊地美香
[RUSH LIFE!]


公私にけじめを付けるってのは、私達の暗黙のルール。
だけど、人間。
たかだか、人間。
我慢が出来なくなって歯止めが効かなくなる事だって、往々にしてある。

「お疲れさま〜〜」
「はいな、お疲れ様」
デカマシンの格納庫に帰り着いてからマシンドーベルマンの中でお互いをねぎらい合って・・・

「キスだけだよ・・・?」

唇を奪い合った。
『歯止めが効かなくなる時』ってのは・・・アリエナイザーをデリートし終わった後。
いくらスペシャルポリスでも人の子、デリートは心が痛む。
ましてやワケありのアリエナイザーなら尚更、普段より乱れて求め合っちゃったりする。

いつもは二人っきりになってお茶でも飲んで、落ち着いたら一戦交えるんだけど・・・私もウメコも、今日はそんな我慢も出来ないみたい。


ウメコからの口付けの後、今度は私からのディープキス。
サイドシートを倒してフラットにして、身体をくっ付けながら唇も吸い付けて、舌を絡め合わせる。
歯列をたどったら、さらさらした唾液が私の喉に注ぎ込まれてくる。
興奮で熱くなった吐息の匂いと、甘い汗の匂いが鼻を刺激する。
唇を離して、口の横に付いてた唾液の滴をチュッ、と吸った。

あ〜あ、やっちゃった、車の中のキス。

「いいのかなぁ、車の中だよ?」
「何をおっしゃるウサギさん。ウメコ・・・ヤなの?」
わざとらしい声で、色っぽく囁いてみる。
ぶっちゃけ、制服でするのは嫌じゃなくなってた。
『オフィスラブ』ってヤツも、たまにはいいかな、って。

「ヘンタイ!エッチスケッチ、マイペット」
鼻を軽く摘まれた。
えげつなぁ、それはなくってよ?
つれないなぁ・・・っていうより、恥ずかしがってるの・・・?

手を翳すように彼女の前に差し出した。
邪魔な黒革の布切れを咥えて外された後、噛み付くように手を握られた。

――はやく――

そして手の甲にキスをしながら、思ってることを伝えてくる。
うそつき。
言ってる事と考えてる事、バラバラだよ?
ホントの事言っただけなのに、頬を真っ赤にして膨らませながら視線を叛けた彼女の制服のジャケットを開いて、薄いアンダーの上から胸を弄った。
膨らみって呼べるほど胸は無いけど、形は悪くない。
かわいい乳房は汗で湿っててシャツが張り付いてて、中心が固くなってる。

「さわるよ」
首を縦に振ってるけど・・・横に振ってたとしても、止めないよ。
シャツを捲って後ろに手を回してブラのホックを外して、肌を啄ばむ。
クンッ、と鼻を鳴らして甘い汗の匂いを吸い込みながら、両方の乳首を交互に舐めてしゃぶった。
「・・・あぁっ・・・んぅくっ・・・」
乳首の周りに軽く歯を立てたら、ことさら上ずった甘い声を上げて肌を脈打たせる。

「声上げちゃダメだよ、ウメコ」
「やぁっ、だってぇ・・・」
そんな声上げないでよ、オーバーヒート起こしちゃいそう。
貴女の言葉で言うとしたら・・・チョー可愛い。

ちょっとだけ、苛めちゃおっかな?

スカートをめくった私はホットパンツを下ろして、太股の付け根に顔を近づけた。

「ふぁ・・・あん!」
パンティ越しに何度も舐め上げてからふうっ、と息を吹きかけると、ちょっとずつ横から染みはじめる。
キュッと布を食い込ませて何度も擦って、入り口の周りに付いた蜂蜜みたいな粘っこい蜜を舐った。
ちょっとずつ、車の中の匂いが変わる。
シートのレザーの匂いが、甘酸っぱい匂いに変わっていく。

「待って・・・一緒にしたいよ」
「え?」
「だから、一緒に・・・お尻こっち向けてミソ?」
うん、『ミソ』の使い方、ご名答。
いいよ、ご褒美あげる。

私の目を見て、切なそうに見つめるウメコが愛しい。
びしょびしょに濡れたパンティを毟り取ってから、ブーツとホットパンツを脱いでシートに跨って彼女の頭に下半身を向けるようにして覆い被さった。
スカートをたくし上げられて、パンティの脱がされて剥き出しにされたお尻を撫で回されながらキスされた。

「あん・・・ぁ」
草むらを唇でいたずらに引っ張られるだけで、おかしくなりそうになる。
舌の腹を広げて、めいっぱい舐められる。
花びらも、内側も、紅く膨らんだ濡れた核を何度も往復されると、ぶるっ、と脚が震えた。
私も彼女の入り口を指で割って、舌で抽送を繰り返した。
彼女の呼吸が、後ろ側に触れる。
「あっ、まだ・・・」
だけど私の拒絶は関係なしに、ウメコはつぼみを舐めてきた。

「あぅ・・・あ・・・汚い・・・」
自我が保てなくて、シフトレバーを握り締めてた。
チロチロ舐められてから、ヌルッと舌先が入り込んで動く。
身体中舐め尽くされてるみたいだった。
腰から力が抜けて、彼女の顔の上に下半身が落ちそうになる。

本当に、どうしようもないな、私。

まだ洗ってもない女の子の場所と、お尻舐められて気持ちよくなってるなんて。

「もうだめ・・・ウメコ・・・」
「ジャスミン、一緒にいこうよ・・・・・・」

――もっと、名前呼び合いたかったのに――

考えてたのは、一緒のこと。
熱くなる身体を委ね合って、一緒に波の中に飲まれた。


アリエナイザーの報告会議まで、もうちょっと時間がある。
コトの後、私達はマシンドーベルマンの中で余韻に浸る・・・っていうより、行為の疲れでぐったりしてた。
窓開けて換気しとかないと、何かで他の誰かがコレに乗っちゃった時、困るからね。

「ねえ、ジャスミン」
「ん?」
「よかったね、たまには・・・」
何が?って言おうとしたら、手を握られてた。

・・・カーセックスって、そりゃ古めかしい言い方だから、言葉にしたくないよね。

「またしよっか?」
「よろしくってよ〜〜。ま、わたしはいつでもいいけど」
「今からでも?」
「よろしくってよ!ああんきてぇ〜〜」

じゃれる私達を引き離すように、ライセンスが鳴った。
★特撮系 > 特捜戦隊デカレンジャー >
┣茉莉花×小梅A41
作者:むらさめ
◆キャスト
茉莉花(ジャスミン)…木下あゆ美
小梅(ウメコ)…菊地美香
小津芳香…別府あゆみ
男(天道総司・仮面ライダーカブト)…水嶋ヒロ
[another fireball]


桜の季節が過ぎた繁華街は、初夏の陽射しが降り注いでいる。
休日はお客でごった返しているこの街も、平日のこの日は人が疎ら。
宇宙警察地球署、SPDのメンバーとしての多忙な日々の合間のまとまった休日。

「ウメちゃ〜〜ん」

汗ばむほどの陽気の中、葉桜になった木の下で待ち合わせをしていた胡堂小梅は、聞き覚えのある声に思わず振り返った。
愛称はウメコ、でもウメちゃんって呼んでくれるのは一人だけ。

「あれ・・・芳香ちゃん?」
「久しぶりだね!元気だった?」

女性はピースサインを作ってそれを目元にあてがいながら微笑んだ。
そして手を取り合いながら、再会を喜び合う。

「すごいね、デート?」
「うんっ、今日ね、三回目なの!!芳香ちゃんスマイルで頑張るんだ!!」

小梅が芳香に目をやると、勝負服、きれいなメイク。
そして香水のいい匂い。
(・・・あのメモ帳の男の子達かな・・・)
「うわぁ、すごい」って相槌を打ちながら、一年前に見せてくれた分厚いメモ帳の事を思い出す。
相変わらずだなぁ。
唖然としながらも、変な懐かしさに支配される。

「ウメちゃんも待ち合わせでしょ?」
「うん、そうだよ」
「ふ〜ん」
含み笑いをして、さも当然のように続ける。

「センちゃんさんとでしょ?隠したって無駄だよ?芳香お見通しなんだから〜」
肩の辺りをうりうり肘で小突かれながら、小梅は少し黙った。

やばい。
まだ芳香ちゃんに話してなかった。
もう一年近く経ってるから、話さなくてもいいかなって思ってたけど・・・
芳香ちゃんや魁君達、魔法使いの兄弟『小津家』と地球署のメンバーが一緒に戦った後、わたしはセンさんとダメになった。
そんなだから、ちょくちょく相談に乗ってもらってた芳香ちゃんとは疎遠になって・・・だから何にも知らなかったんだっけ。
まぁ確かにフラれた時は傷ついたけど、今は新しい人も出来て、センさんと居た時よりももっと幸せ。
でも、どうしよ?
今のわたしの事、話そっかな?
もうちょっとしたらあの人も来ちゃうし・・・何より芳香ちゃん、あざといからなぁ・・・

「こ〜〜〜〜うめちゃ〜〜ん、あ〜〜〜〜そぼ〜〜〜〜!!」

苦笑いしながら黙りこくった小梅と、刑事の取調べのように矢継ぎ早な芳香。
そんな二人に割って入るように・・・というか、小梅を助けるように『あの人』がやって来る。
女性の声。
穏やかそうな声色を無理矢理ハイトーンにしているような感じの声だった。
切れ長の瞳、ボブカットが少し伸びた感じの髪形。
右ひざが破れたジーンズにブーツ、シックな色合いのジャケット。
何より特徴的なのは、両手に着けている、レザーの手袋。
ミニスカートにサマーセーターという、いかにも女の子らしい出で立ちの小梅とは対照的。

「ジャスミン、遅いよ。十分遅刻!」
ジャスミンと呼ばれた女性は、照れくさそうに頭を掻いた。

礼紋茉莉花、愛称はジャスミン。
同僚であり、コンビであり、仲のいい友人であり、何よりセンこと江成仙一と別れた小梅の新しいパートナー・・・などといった回りくどい言い方をしないで遠慮会釈なく言ってしまえば、恋人同士。
小梅の惚れっぽい性格で遠回りが続いていたのだが、仙一との離別によって茉莉花の大切さに気付き、「女の子同士」を乗り越えて現在に至っている。
「お腹ペコペコだよ、もうっ」
「はいはい、メンゴメンゴ。いつもだったらウメコが待たせるのにね」
「それは言わない約束だよ、」
「おっかさん!じゃ、レッツラゴー!!」

レッツラゴー、にことさら力を強く込めて。
茉莉花はまるでリードに繋いだ犬を引っ張るように、手袋をした右手で小梅の左手を強く引っ張る。
「ぅわっ!!」
「さぁ、行こ行こ!!早くしないとランチなくなっちゃうよ〜〜」
背中を向けた茉莉花は楽しそうな声、でも変。
「ちょっと待ってよ!」
小梅の言葉に、引っ張っていた茉莉花はパタッと止まって、くるりと踵を返した。
まるで機嫌の悪い猫みたいなオーラが出ている。
アリエナイザーでも見るような目つきで芳香を見ている。
握られた左手の指を、掌の中でぐりぐり転がされてる。

・・・?
もしかして怒ってる?
ううん、もしかしてじゃなくて・・・絶対に怒ってる。
すごく怒ってる。

即座に茉莉花の手袋を外して自分の『主張』を込めながら握る。

さっき芳香ちゃんにセンさんの事聞かれて答えに戸惑っちゃったの、見たんだね。
嫌だよね、前の付き合ってた人の事、誰か聞かれたりするの嫌だし、いい気分しないよね。
でもさぁ、そんな恐い顔しなくったっていいじゃん。
芳香ちゃん、何も知らなかったんだよ?
それにもう、ジャスミンが居てくれるからへっちゃらだもん!
そんな事で怒るジャスミンの方が、ナンセンス!!

ところがどっこい、当の本人は・・・恋人の声が聞こえてても、わざと聞こえないフリ。

「あ〜あ、嫌ンなっちゃうな、デリカシーの無い人!可哀相だね、心が痛かろうよ」

まるでフォークソングのような言い回しで、芳香をなじる。
あちゃ〜〜、だめだこりゃ・・・

「ジャスミン!!」
とうとう小梅は叱るような口調で声を上げた。
いつもは茉莉花が小梅を叱り付けるシチュエーションなのだが。

「おお〜〜恐。何じゃらほい?」
「何じゃらほいじゃないでしょ?そんなにツンツンしなくていいじゃん、芳香ちゃん何にも知らないんだよ?」
「知らないからって、聞かないでいい事ってあるでしょ?」
「だから、知らないから・・・もうっ、天邪鬼!!」


「きゃあっ!」

それまで二人の口論を好奇の眼差しで聞いていた芳香が何かに突き飛ばされて声を上げながら転ぶのと、交差点の信号が青になって『とおりゃんせ』が流れ出すのとはほとんど同時。

「おやまぁ、大丈夫・・・?」
いい気がしないとはいえ、茉莉花もさすがに人の子。
ヒートアップしそうになる小梅を制して、一緒に芳香に歩み寄る。

「いたた・・・」
「突き飛ばされたの?」
「感じ悪いな、謝っていけばいいのに〜・・・あれ?あれれ?」
衣服に付いた砂を払い落とすより先に、自分の手元を確認した後でおろおろしたような表情で辺りを見回す。

「芳香、ちゃん?」
「やだ、無いよ、芳香のバッグ・・・あの中お財布とマージフォン入ってるの・・・」

ふっと茉莉花が横断歩道を見ると、初夏のこの時期に不釣合いな、見るからに怪しそうな黒ずくめの人影が人目を避けるように早足で歩いていた。

一応警察官、職業柄『嫌な予感』というのはこういう状況で感じてしまうもの。
「ウメコ、ちょっとあれ見てミソ」
「何?」
「さっき芳香ちゃんにぶつかってきたの、アイツじゃない?」
「う〜ん・・・なんかそんなだったような気もするけど・・・」
何だろ、あれ・・・
人にぶつかっといて謝りもしないで、そそくさ逃げていくなんて。
おまけにこのタイミングで芳香ちゃんのバッグが無くなっちゃうって・・・まさか?

二人の頭に『ひったくり』という物騒な単語が浮かんだその後、私服のポケットから鳴り響くSPライセンスのコール。
アリエナイザー出現を知らせるエマージェンシーコールだった。

【デート中ごめんあそばせ。出たわよ、大物!他のコ達にもコールしたわよ】
「スワンさん、やっぱりですか?」
【やっぱりって?アナタ達何か知ってるの?】
「わたし達、さっきそれっぽいのに出会っちゃったかも・・・全身黒ですか?」
とにかくこれを見て、と言った後でモニターからスワンの顔が消えて、数日前にドギーとスワンに配布された資料が映し出される。

『リタカ星人ルドブン。
18の星系で無差別に殺人や強盗、窃盗や暴行を繰り返しており、現在本部より指名手配中。
尚、活動する際には擬態して黒いコートを着用しており・・・・・・』

資料の内容に全部目を通さないうちに、行動を開始する。
頭の中身を休日から捜査に切り替えるのに合図は要らなかった。
小梅が周囲から情報を収集する間、茉莉花は利き手から手袋を外して、地面にそっと触れる。
冷たいアスファルトから掌に。
掌から神経に。
神経から意識の奥に。

―芳香ちゃんにぶつかった男の正体・・・地球人ではない、禍々しい姿―
―それをひた隠す人間の姿、両手に装備された武器―
―わざとぶつかった後、その手で芳香ちゃんのバッグを奪って―

「何か解った?」
茉莉花は閉じていた眼を開けると、駆け寄ってくる小梅に口を開く。

「うん、周りの人も黒い人影がぶつかって、って・・・」
「な〜るへそ。じゃウメコ・・・かけっこだ!!」
「ロジャー!!」
「バッグ取り返してあげるね」と二人で声を揃えた後、雑踏の中を一直線に駆け出していった。


〜〜  〜〜


人ごみを掻き分けながらやった『障害物競走』のゴール地点は、ビルとビルの間に挟まれた小さな緑地公園。
勤務の時みたいにマシンドーベルマンがあれば、こんな風に息を切らして無駄な体力を消耗することもないのだが。
それにしても、オーディエンスというのは冷たいもの。
血相変えて捕物やっても、誰も気に止めようとはしないで知らんぷり。
もっとも走っている、それも怪しい人間を取り押さえるというのがムチャクチャな話。


「お待ち!!」
「バッグ返しなさい!!」

茉莉花と小梅が怒鳴りながらライセンスをかざすと、立ち止まった黒ずくめの男はマントを自ら剥ぎ取って、擬態を解く。
人間の輪郭が、さながら脱皮のように崩れていき、現れる本性。
まるで蜥蜴のような尻尾を携えた異様な風体、凶悪な面構え。
そして右腕には蛮刀、左の腕にはハンドメイドタイプのマシンガン。

「oh、モーレツ」

地球の言葉を理解していないのか、それとも単純に舐められているのか。
耳まで裂けた口元を吊り上げながら残忍な笑みを浮かべた後、茉莉花の言葉をかき消すように、無言のままマシンガンを地面に発砲する。
チェンジもまだなのに、いきなり先制攻撃してくるなんて・・・女の子に何すん
のよ!!
でもよくよく考えてみると、「待て」って言って観念するような相手だったら、こんなふうに本部直々の『お達し』なんて出ないか。

「こらぁっ!!」
「ノンノン、あちらさんも本気のようで。それよりも、見てミソ」


茉莉花に促されて小梅が辺りを見回すと、薄くなっていく硝煙に見え隠れする、夥しい数の影。
人ではない、機械人形。
アーナロイドは今にも飛び掛りそうな勢いで、そしてイーガロイドはソードで肩を叩きながら、不敵に佇む。
横に並んでいた小梅はすぐに相棒の後ろに回って、背中をくっ付け合うようにして立つ。

「アジャパ、スライムに囲まれちゃった」
「どうすんの?・・・ねぇジャスミン、ところでさぁ」
「何じゃらほい?」

「わたし、お腹空いた・・・レストランのランチ、まだあるかな?」

ホントにもう、このコは。
すぐに食べ事だし!
でもウメコの考えてることくらい、分かるよ。
ピンチの時ほどリラックスしないとね?
だから私・・・ううん、私達乗り越えられるんだ。
まぁこんな事なんてしょっちゅうだし、慣れっこだけど。

「ウメコ、一件コンプリートしたら、おごってあげる」
「へ?マジ!?チョー嬉しい!!」
「その代わり、私達だけで何とかしたら・・・だよ?アーユーOK?」
「イエ〜ス、アイラブユー、ダ〜リン」

さっきまでケンカして、膨れてたのに。
ゲンキンだなぁ、君ってヤツは。

まるっきりな日常の会話をする二人の表情は、どこまでもクールで熱くて、真剣。
深呼吸を一回ずつした後、

「チェンジスタンバイ!!」
「ロジャー!!」
気合を入れるように口を開いた茉莉花に小梅が応答して、身構えながらSPライセンスのスイッチをオンに入れる。

「エマージェンシー!」
イエローとピンク。
鮮やかな結晶に包まれながら、眼前のアーナロイドの喉許にサイドキックを蹴り込んで爆発させる。

「フェイス・オン!」
マスクに包まれ、デカメタルの結晶が完全にスーツを形成するのと同時にハイジャンプしながらディーショットを握り締める。
雨のようなパルスレーザーの軌道は、ただまっすぐに感情を持たない機械の尖兵を容赦なく撃ち抜いていく。

狙い定めなくてもどこかに撃ち込んだら、絶対に機能停止起こすから何も考えなくていいや。
よかった、公園に誰も居なくて。

二人の狙いは、奥の奥。
芳香のバッグを奪った、凶悪なアリエナイザー。
二度三度、ディースティックでイーガロイドの斬撃を切り払った後、一直線に二色の流線型が駆け抜けていく。

飛び上がりながら蹴りを放った小梅の中足が、空を切る。
そのまま空中で反転しながら、左の踵で二撃目。
鈍重な体躯に似合わず、異様なすばしっこさと勘のよさ。

懐に入った相棒を援護する茉莉花を嘲うように、ルドブンの硬い表皮はディーショットのレーザーを受け止めて、無力化していく。
★特撮系 > 特捜戦隊デカレンジャー >
┗茉莉花×小梅A42
作者:むらさめ
◆キャスト
茉莉花(ジャスミン)…木下あゆ美
小梅(ウメコ)…菊地美香
小津芳香…別府あゆみ
男(天道総司・仮面ライダーカブト)…水嶋ヒロ
「つぅっ!」
「きゃぁっん!!」
一寸の隙で、手痛い反撃。
回し蹴りじゃない、尻尾の一撃の後で刀で切りつけられる。

思いっきりぶっ飛ばされる。
何かのマンガみたいじゃん、これじゃ。
あんまりにも・・・とまでいかないけど、ちょっと強いかな?

「ウメコ、よそ見しちゃメッ!」
抱き締めながら転がった。
追い討ちかけるみたいに、今度はマシンガンの雨あられ。
どうせくれるんだったら、感謝感激にして!


【clock  up!】


唐突に、「救世主」は現れる。

日ごろの行いの良さか、それとも茉莉花と小梅の美貌に神様が答えてくれたのか。
片付け損ねた三体のイーガロイドが止めを刺そうと、ソードを振り上げた瞬間に聞こえる、微かな電子音声。
その正体が何なのか考える間もなく、二人の身体はイーガロイドから引き離されていた。

「痛!・・・く、ない・・・?」
「ジャスミンあれ!」
立て続けに視界に飛び込む、旋回する火の玉。
火の玉は茉莉花と小梅を守るように、ことごとく尊大な機械人形を打ち据えていった。

「あれって・・・」
「真っ赤な、カブト虫?」

ルドブンにも一撃を加えた後、やがて赤いカブト虫は公園の入り口に滑空していった。


「おばあちゃんは、言っていた」
声の主の手の中に、すっぽりと納まる。

「男がやってはいけないことは三つある。一つは女の子を泣かせること」
背の高い、眼光の鋭い男だった。

「食べ物を粗末にすること。最後は・・・」
静かな声が響き渡る。

「愛し合う者を、傷つける事だ」
歩を進めながら、来ているジャケットを翻す。

「キサマ、ナニモノダ!!」
覚え立ての地球の言葉を使ったアリエナイザーに、さらに続けた。

「天の道を往き、総てを司る男・・・」
重たげな、鈍く輝く鉄のベルトにカブト虫をセットした。

「変身!!」
眩い光が、男の身体を包み込んでいく。
茉莉花と小梅が見慣れた宇宙警察の開発したデカスーツとも、アブレラ達の作り上げたマッスルギアとも全く違う。
例えればそれは、「蛹」。

襲い掛かるアーナロイド達を的確に葬っていく。
アーナロイド達の攻撃を受け止めながら、叩きつけ、握りつぶし、吹き飛ばして爆発させていった後、カブト虫のホーンをゆっくりと右に反転させた。

【cast off・・・change beetle】

銀色の蛹は勢いを増して弾け飛ぶ。
猛スピードのそれは、まるで意思を持った弾丸のように有無を言わさず、アーナロイドとイーガロイドのみを狙い撃ちながら無慈悲に殲滅させていった。
そして現れる姿、せり上がるホーン。
身体中に隆起していく、カブト虫の意匠。
例えればそれは「脱皮」。
ルドブンが男にマシンガンを撃つ。
それを意に返さず、無言で歩み続けていく。
ジャンプをしながら、男の蹴りが炸裂する。
冷蔵庫を二階建てのビルから落下させたような、凄まじい音が響く。
叩きつけるような蹴りの後、ボディブロー。
いや、ボディブローではない、空手の正拳中段突きのような、腰を落とした重い突き。

ルドブンの右手の刀を受け止めるのは、腰に提げたクナイ。
「グギャアッ!!」
鍔迫り合いの後、さながら血しぶきのように飛び散る火花。
すれ違いざま、残像を残しながらウロコを切り裂いていく。

「ちょっと何よこれ?」
「さぁ、私聞きたい、何じゃらほい?」
「分かんないってば!でもこれ、アリエナイザー・・・じゃないよね?」
「違うと思う」
「じゃ、正義の味方?」
「うん・・・カブト虫に悪い人は居ない。天が呼ぶ地が呼ぶ」
「人が呼ぶ!ジャスミン!!」
とにかく、わたし達を助けてくれた事に変わりないから、お礼しないと。
あとは野となれ、山となれ!!

茉莉花と小梅は顔を見合わせて立ち上がると、再び高く飛び上がる。

「えいっ!」
掛け声と一緒に感じる手ごたえ。
いや、「足ごたえ」とでも言うべきだろうか。
二人は飛び横蹴りを確実にルドブンの眉間に叩き込む。
「はっ!」
後ずさりして怯むルドブンに追い討ちを掛けるように、更に男の後ろ蹴りが鳩尾にヒットする。
堪えられなくなったルドブンの口から苦悶の呻きと共に吐き出される、黒い物体。
「見つけた!」
体内に隠してあった芳香のバッグを見た小梅は、もう一度ジャンプしてその手にしっかりと握った。

「やったね」
二人は男の顔を見る。
「一緒に撃つぞ」
うん、と大きく頷くと、SPライセンスを取り出してジャッジメントモードに切り替える。

「リタカ星人ルドブン、18の星系における無差別大量殺人、強盗、暴行および地球における窃盗の罪で、ジャッジメント!!」

宇宙最高裁判所からの判決は、赤い色。
「デリート許可!!」
刑の執行を許される、真っ赤な罰。

猛スピードで二つに散開した二人、そしてその場に立ったままの、男。

「はああぁっ!!」

茉莉花は逆手、小梅は順手。
ディースティックを抜き放ちながら気合を込め、勢いを付けて挟み撃ちにして、一閃する。
打突に用いられるそれは、鋭利なサーベルのようにアリエナイザーの身体を引き裂く。

【one,two,three・・・】

ルドブンが苦悶の表情を浮かべながら逃げるように駆け出すのと、男が再びまっ
すぐに歩き出すのは同時。
ベルトのボタンを三つ、順番に押しながら悠然と歩く。

「ライダー・・・キック・・・!!」

エネルギーチャージされた右足がディーソードベガのように煌く。
抵抗するルドブンの首を、刃のついた右腕ごと刈っていった。

爆発音、舞い上がる炎、そして未練を残すような断末魔。

跡形もなく、原子に還っていった。


「まさかこんなところに客がいるとはな」

ドギーやスワン、そしてホージーによって本部への事後報告がされることとなる事になった。
茉莉花と小梅がチェンジを解除するのを見た後、男はベルトにセットしてあったカブト虫のホーンを戻して元の姿になりながら、してやったりといったような表情で言った。

「は?」
「客?」
何だろ?
確かにわたし達、お昼ご飯食べ損ねてる。
「お客」って、この人食堂か何かやってるの?
ううん、食堂って感じじゃないかな・・・お洒落なレストランのシェフ、って感じかな?

「ウメちゃん、ジャスミンさんありがと・・・あっ、この人知ってる!」

目が点になる二人の後ろから、追い着いた芳香の声がした。
芳香は二人に頭を下げながら言って、話し始めた。

どうやら何かの雑誌から口コミで広がって有名になったレストランの雇われシェフだとかで有名な人らしい。
女性雑誌にはくまなく目を通す小梅でも、さすがに見落としていたようで。

「ジャスミン・・・どうする?」
「どうするも何も、高貴な振る舞いには高貴な振る舞いで返さないと。助けてくれたお礼しよっか」
「そうだね・・・わたしお腹ぺこぺこだし!早く行こ」
「ノンノン、ジャストアモーメント」

「その前に」と、急く小梅の頭を軽くなでた茉莉花は、スッと小梅の足元にしゃがみこむ。

「膝っ小僧、擦り剥いてる」

しゃがんでからハンカチを取り出すと、血を拭き取って手袋を外してカットバンを膝に貼った。

「いいよ、痛くないから」
「甘〜〜い、バイキン入ったら困る」
「いいってば!」
「だめっ!!一人じゃないんだよ、私がいるんだよ!何かあったらどーするのっ!?」

いきなり、大きな声出して。
やっぱり冷静じゃないじゃん。
最近いっつも、わたしの事になったら冷静じゃなくなるんだから。
でも、ありがと・・・
大好きだから、わたしも。

「へへへ〜〜〜、ふ〜ん・・・そうなんだ〜〜」

二人の一部始終を見ていた芳香が、ニコニコしながら突然口を開く。

「へぇ?な・・・何?」
ハッとしたようなリアクションの後、気まずそうに口をそろえて言葉を返す二人の顔は、耳まで真っ赤。

「何がじゃないよ!ウメちゃんの新しい恋人、ジャスミンさんなんだ!」

さらに核心。
当然、芳香に悪気などは無い。
いや、長女ゆえの洞察力というべきだろうか、むしろその笑顔には小梅の事情を何となく察していたような感すらある。
もっとも小梅にしても、先ほど芳香に問い詰められた時に白状する覚悟をしていたのだが。

「え、えぁ〜〜〜〜、まその〜〜・・・」
「いいんだよ、芳香だってお見通し!センちゃんさんと居る時より、すっごく幸せそうだもん!うん、そっちの方がお似合い。幸せなのが、一番一番!!」

取り返したバッグの中から鳴るマージフォン。
おそらくはこれから勝負をかけるであろう、相手からのもの。
芳香がピースサインを作って立ち去った後、男も人差し指を天に掲げながら静かにその場を後にする。

「あれ、何これ」

男が立っていた場所には、「天」と描かれた一枚のカード。
               
『今日のスペシャルメニュー ひよりランチ お値段 時価で応じますただし、カップルで来られた場合は二割引きにて提供致します。  レストラン「Bistro la Salle」』

カップルねぇ・・・・・・
カップル??
だったらわたし達、その男の人にも・・・

「そうみたいだね、さっき助けてくれた時、『愛し合う者を傷つけたらいけない』とか言ってたし。助さん、格さん、参りましょうか」

時代劇のヒーローのように高笑いする茉莉花。
戦い疲れと空腹でどうでもよくなった小梅も、一緒になってケタケタ笑い出す。

「でも場所は?」
「たぶん、あのコに付いて行ったら分かるんじゃない?」

道案内は、さっきのカブト虫。
まるで早く来いよと言うように、元気よく飛び回っていった。

これにて一件コンプリート。
全ては君を、愛するために。


fin
このページの先頭へ