2007/01/17
┣天野×杉G12
作者:リン
◆キャスト
天野ひかる…深津絵里
杉裕里子…鈴木京香
連日徹夜の疲れもようやく取れて、久々の休日。目覚めたのは正午過ぎ。
眠るっていう行為はやっぱりそれなりに体力のいるもの。
ご多分にもれず少しだけだるい身体を起こしてリビングへ向かうと、窓辺にふくれつらを見つけた。
──少し、寝すぎた?
せっかく泊まりに来たのに悪い事をした。
それなのに、寝かせておいてくれるいじらしさ。
私は柄にもなくちょっと(本当に、ほんのちょっとだけれど)嬉しくなって、窓辺に座りこむ細い背中を後ろから抱き締めた。
天野は眉を寄せたままの顔で私を見上げた。
「見てください!このひどい天気」
「え?」
「昨日見た天気予報、快晴って言ってたんですよ?わたし、この目でちゃんと見たんですから」
「ああ…そう」
「そうですよ!あー、もー、あったまくるなぁ!」
そう嘆きながら恨めしげに雨空を見上げる天野を、複雑な気分で見下ろす。
この娘は私がいつまでも寝ていた事に腹を立ててるんじゃなくて、外れた天気予報に怒ってるってわけ?
…呆れた。
聞こえないように小さく溜め息を吐き出す。
何に呆れたって、天気予報ごときに腹を立てる天野に。
自意識過剰な自分のおめでたい発想に。
腕を離そうかと思ったけど、何しろこうしてくっついたのは他でもないこの私。
ここで目に見えて不機嫌にすればこの娘の不機嫌を煽るのは明確で、何もこんな冴えない天気の時に気まずい雰囲気にはしたくない。
せっかくの休日なのだ。
そう思いとどまったのは、どうやら間違いではなかったらしい。
私に抱き締められるままになっている天野が、ふいっと視線を落とした。
「………先生も起きてこないし」
ぼそぼそと。
雨の音に紛れて、耳を澄まさなければ聞こえないくらいの呟き。
自意識過剰なんかじゃなかった事を知る。
「悪かったわ」
私が素直に謝った事に素直に驚いたらしく、ポカンと口をあける天野。
失礼極まりない。
思うのに、どうしてもしかめつらが作れない。
なんとも言えない表情で言葉を探しあぐねていると、腕の中で天野はふわりと頬を綻ばせた。
「朝ごはん、なに食べたいですか?」
「もう朝じゃないでしょ」
さすがに、と私が苦笑してみせても、天野の綻んだ表情はかわらないまま。
「先生は今起きたんですから、今から朝なんです」
おどけてわざと得意気に、それでいて自分でも笑いを堪えながら、私を見上げてくる天野。
今度こそ完全に頬が緩む。
今日はもう、それで良い。
「おはようございます」
にっこりする天野に、うん、としか返せなかったのは、また柄にもなくつい額に唇を落としていたから。
みるみる頬を真っ赤に染めて。
せわしなく耳に髪をかける天野に、ほのかに悪戯心。
食事はもう少し後でも構わない。