二次元キャラ系SSまとめ
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┗天野×杉B01
作者:◆XozsP3Xhnw
◆キャスト
天野ひかる…深津絵里
杉裕里子…鈴木京香
いつからだろう。
憧れだと思っていた気持ちを、恋心だと確信するようになったのは。

事故現場で出会った雪の降る夜。
亡くなった人がいる事故だから「出会い」なんて言ってはいけないような気がするけれど、あれは紛れも無く私と杉先生の出会いだったのだ。

あれから私は監察医になり、関東監察医務院に就職した。
杉先生は好きじゃないだろうけど、私流に言うのであれば「運命的に」私たちは巡り合い、黒川さんや月山さんと女4人でご飯を食べたり出来るような仲になった。

杉先生は、妹さんの事件や色々あったけれどやっぱり医務院に戻ってきてくれた。
勿論、私のためではないのは分かっているけれど、こうしてまた一緒に働けるのはとっても嬉くて、でも、ずっとずっとつらい。

この気持ちを隠さなければいけないから。

そう、私は杉先生に恋をしている。

今日は仕事もひと段落ついて、初夏の日差しが普段は殺伐としている医務院にも和やかな空気を照らしている。
田所さんは「ちょっと出かける」と言ってお墓参りに行ったみたいだし、黒川さんは期限間近のエステ割引券を使うと言って早引けしてしまった。

私は、特に用事も無いんだけれどなんとなく顔が見たくて、杉先生の部屋をノックした。


コンコン  

「はーい」

あれ、機嫌が良さそうな杉先生の声ともう一人、あの人の声が聞こえる。

「あら天野じゃない、ちゃんと働いてる?そうやってすぐ顔に出さないの、『サボって杉先生とおしゃべりしに来たくせに』って思ってるの分かるわよ。」

そう、月山さんだ。妹さんの一件があってから杉先生と月山さんは仕事の件でよく杉先生の部屋で話をしている。
本当に事件のことなのだろうか、こんなに頻繁に来ていて・・・。無駄に疑ってしまう自分がうらめしい。

「ほら、天野が仕事を持ってきたんじゃない?私はそろそろ聞き込みに言ってくるわ。」疾風のように月山さんは去っていった。どうしよう、仕事なんて無いのに。

「ほら、天野が仕事を持ってきたんじゃない?私はそろそろ聞き込みに言ってくるわ。」疾風のように月山さんは去っていった。どうしよう、仕事なんて無いのに。

「あ、杉先生・・・あの・・・」

「仕事なんて特に無いのにどうしよう、って顔ね。紀子は何にも分かってないんだから。どうしたの?」

月山さんが見抜けなかったことを杉先生が分かってくれたことに、戸惑いよりも嬉しさを感じた。

「いえ、えっと、特に用事は無いんですけど・・・」

「やっぱりね。じゃあ、そこの書類を日付が若い順に並べるの、手伝ってくれない?どうせ暇なんでしょ?」

「はい!」

嬉しくて声がつい大きくなる。ちょっと呆れたように杉先生は笑って、でもあっという間にクールな表情に戻って背を向けて仕事を始めた。

「・・・・・・・・・先生」

「先生って呼ぶのやめてって言ってるじゃない」

「先生!!!今は仕事中じゃないですか!?なんで月山さんが先生の部屋にいるんですか?
もうあの事件は片付きましたよね?ていうか仲悪かったのになんであんなに仲良くしてるんですか?!」

やばっ・・・最後につい本音が出てしまった。

「天野。今日は仕事のことじゃなくて、冴子の男のことを教えに来てくれたの。
もう縁は切ったはずだけど、冴子にも捜査に協力してもらうかも、って。
確かに勤務中だったけど私たちはオンだかオフだか切れ目が無いような仕事でしょう。
なんでそんなにつっかかるの。何が言いたいの?」

まずい・・・怒らせてしまった。だってあんなに仲が良さそうにしているから。


「仲良くしてちゃ、悪い?」

えぇぇっ??なんで心が読まれてるの?!?!

「あなたは表情で分かるのよ。ほら、本当は何が言いたいの?言って御覧なさい。」

そんなに綺麗な顔に近寄られて叱られたら、隠せるものも隠せなくなってしまう。
もういいや、この際どう思われても。先生には、背を向けてみた。顔を見ながらなんて、言えない。

「いやなんです、杉先生が他の人と仲良くしているのが。





   私は杉先生が好き・・・だから」

言ってしまった。怖くて顔が上げられない。どんな顔が待っているのだろう。軽蔑に満ちた眼差しだろうか。それとも?



「分かってたわよ、そんなこと。あなたはやっぱり気づいていないのね、私の気持ちに。」


え?と思いおそるおそる顔を上げた瞬間、後ろから抱きすくめられた。杉先生の匂いに包まれる。

「いつ言ってくれるか、ずっと待っていたのよ。」

「じゃあ、先生はずっと気づいてたんですか?!?」

信じられない!!ずるい!!!

「これからその埋め合わせをしてあげるから・・・ずっと。いいでしょ?」

嫌だなんて言えるわけがない。嬉しくて嬉しくて、涙が頬を伝っていることに気づいた。

窓の外の雲ひとつ無い快晴の空が、にじんでいた。
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