二次元キャラ系SSまとめ
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┣茉莉花×小梅A21
作者:むらさめ
◆キャスト
茉莉花(ジャスミン)…木下あゆ美
小梅(ウメコ)…菊地美香
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じっと、手を見る。
ひい、ふう、みい・・・貼ったカットバンの数はこれで八つ目。
そんでもって、目の前には林檎と梨がどっさり入った籠が一つ。

「ウメコ、ネバギバ!!もう一個、ドーンとやってみよう!!」
「やだ、また〜?もう飽きたよ!」
うんざり顔のわたしを見ながら、ジャスミンはニコニコ笑った。

今日は非番。
『恋ゆえの勘違い』で痛い目にあったわたしを癒してくれたジャスミンに『告白』してから暫く経った。
あれから毎日、ジャスミンに料理を教えてもらってる。

ジャスミンは美人でスタイル良くて、捜査だって何だって・・・料理だって、燃えるハートでクールにこなす。
わたしは不器用で突拍子なくて、子供っぽくて、パイパイも無くて・・・って、それはそれ、燃えるハートはジャスミン以上。
センさんと付き合ってた時はちょっとだけ背伸びして、「大人の女」にあこがれたりもしてたけど・・・今にして思ったら、わたしらしくなかったと思う。

話がそれちゃったけど、とにかく料理上手になって何か美味しいものたべさせてあげたい。
何より気を使わないで一緒に居れるのが、とにもかくにも幸せ。


でも、どこの世界でも『教官』ってのは厳しい。

「めッ!!よそ見してるから指切っちゃうの」
一日中林檎と梨の皮むきじゃん、いい加減なんか作らせてよ!!

「あま〜い。ウメコ、この前何作ったか、言ってミソ??」

少しムッとした顔になりながら、ジャスミンは顔を近づけて膨れたわたしの頬っぺたを指で突付きながら言った。
「えっと、ハンバーグとグラタンと、スコーンだよ!」
「ハンバーグは?」
「焦がして真っ黒けにしちゃった」
「グラタンは?」
「生焼け」
「スコーンは?」
「粉の分量間違えて・・・がちがちに、固かった・・・」

思い出して口にしながら情けない。
確かにとんでもないものばっかりだけど、失敗は成功の元。
失敗しなきゃ、前に進めないし!

「小梅ちゃん、よいこつよいこめげないこ!♪それがアナタの、いいところ♪仕方ない、お手本見せてあげる。シチューでいい?」
「うんっ!シチューがいいよ、お腹ぺこぺこ」

くすっと笑って椅子から立って、冷蔵庫から材料を出してキッチンに立つジャスミンにくっ付いてわたしも一緒に立つ。
手袋はさすがに邪魔なのか外して、包丁を手にした。

「うわ、いつ見てもすごい!」
「あたぼうよ。鍛えてますから」

野菜の皮がつながったまま、スルスル剥けていくのに見とれる。
ほんとにすごいな。
あっという間に材料を切って、ルーと一緒に鍋に入れて火にかける。

「・・・・・・」

見慣れた横顔を見ながら、ふっと考えてた。
一緒に居るだけで楽しいからあまり意識してなかったけど・・・まだキスから先に進んでなかったんだ。

想いを乗せて触れたキス・・・それから、先。


包み込んでくれたのが、本当に巡り逢った大切な人がたまたま同じ女の子、ただそれだけ。
だから恐くない!・・・って言ったら、嘘。

本当は、ちょっとだけ恐い。
女の子同士で一線越えちゃうのって、どんな感じなのかな。
でも大好きな人に・・・ジャスミンに愛されたい。
わたしを好きになってくれてずっと見てくれてたジャスミンだってきっと同じように感じてると思う。
でももしかしたら、欲求不満みたくなってるのかな。
待たせちゃってたり、するのかな。

もしエスパーだったら、背中抱き締めるだけで、分かるのに・・・


「おやまあ、何ざんしょ?」

ふいに、胸の奥がキュンと痛くなって、細い肩に抱きついた。

「・・・どした?」
「ごめん」
「何が?」
「待たせてる?」
「は?何を?」

シチューより先にわたしから・・・って、そんな気が利いたこと、言えないけど。

「にゃはははは!!」
いきなり笑い出した、それも大声で。
「なっ・・・何よ!何か可笑しいわけ?」

「シチューより小梅を食べて、ねぇおねがぁ〜い、お・ね・が・い!」

しっかり読まれてる。
楽しそうにケタケタ笑ってるのを見てたら、自分の気持ちが恥ずかしいとかって思うのがバカバカしくなった。

可笑しいから一緒になって笑った。
こんなふうにちっちゃい子供みたいに笑うジャスミンは・・・世界中で多分、わたししか知らない。
だったらいいんだ、何知られたって。

そうだよ、もうカップルだもん。

あなたが本当の笑顔見せてくれたから、わたしも・・・・・・


背伸びして、トレーナーとボブカットの間に見え隠れする白い首筋に一回キスした。
笑い声が無くなって、コトコト鍋の音だけがするキッチンで、そのまま立ち尽くした。

「出来上がるまでちょっと時間あるね」
ジャスミンは深呼吸しながら腰に回してたわたしの手に、自分の手を添えた。
「あのねのね〜、っと」
相づちを打つわたしにいつもみたいに続ける。

「・・・離れてミソ?・・・」

それに反応するみたいに手を解いたら、くるっと向き直して。

ことばを交わす間もなしに、キスされてた。
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