二次元キャラ系SSまとめ
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┗天野×杉F02
作者:不明
◆キャスト
天野ひかる…深津絵里
杉裕里子…鈴木京香
甘い匂いが鼻先をかすめたのは、それから少ししてからの事。
腕を緩めて 体を離すと、
…さっきは気づかなかった。
その手からのぼる白い湯気。
紙コップの中身が甘酒だって判ってすぐ、抱き返してこなかった理由に気づいて思わずホっとする。
成程、ね。


「…それ?」

「甘酒です」


見れば判る、だなんていつもの私なら言う所。
言わなかったのは、
言えなかったのは、
ほら。今日がこんな日だから。
言い訳にするにはなんて絶好の日。
生まれて初めて今日この日、おめでたい気分になれた気がする。

杉先生って甘酒飲めますか?」

「知らないで持って来たわけ?」


呆れて笑うと、天野は目をそらして泳がせた。


「えっと、その」

「飲むわよ。割と好きな方かもね」

「──もぉ」


相変わらず微笑ましいふくれつら。

思わず、
悪戯ごころ。

少し声色の違う「好き」を、もう一度。
少し首を傾げて囁くと、意図に気づいたのか否か。
天野が不思議な表情でこっちを見つめる。

「あのー…」

「好きよ?」

「そ、そっ、そうですか?ならこれ──」

「天野」


背けようとする顔を、頬に手を添えてゆっくりこちらに向ける。
恐る恐る、天野が目だけで見上げてきて、


「好き」


みるみる朱を帯びる頬。
指先にふわりと伝わり始める熱。

なんだかもう、どうしようもなく。いとおしくて。

くるくるかわる表情を眺めながら、止まらなくなってきた自分に今さら気がつく。
止めようとも思わないけど。


「天野。駄目?」

「へっ?」


一瞬揺れた瞳が、またこっちを見上げる。

「まだ熱いのね」

コップを持つ手に手を重ねながら、鼻先が触れるくらいに近づいて。じぃっと瞳を覗き込む。
私を押し戻すでもなく、目もそらせなくなっている天野が、こくりとのどを上下させたのが判る。


「そりゃあ…いれ、いれたてですから」

「そ。なら少しは大丈夫よね」

「えっと」

「ねえ」


もう一度。


「…駄目?」

視線を、
捕えた

「──」

一瞬の間。
長い睫毛を伏せたのを肯定と受け取って、
甘酒よりも先にそれにありついた。

離れた口唇。
ふっと頭に浮かんだのは、柄にもない虫の知らせ。

私が思わず笑みを浮かべたら、天野が怪訝そうに首を傾げて見上げてくる。


「先生?」

「何」

「なに笑ってるんですか?」

「飲まなくて良かった、と思って」

「へ?」

「べつに?」


コーヒーなんか飲んでたら、この味は判らなかった。
なんて、言える訳はないけれど。

「ちょっ…どういう意味ですか?」

「気になる?」

「はい。気になります。教えてください」

「…。お断りよ」

「なっ」

さっき。
ほんのり舌先に感じた味は、甘酒。

「ほら。冷めるわよ。くれるなら早く頂戴」

「もう、なんなんですかっ?人がせっかく──あっ」


それは彼女がきっとほんの一口だけ、味見した証拠。

「お先に」

気づかないフリしてあげる。
から、

「…もー」

そう。その顔。
もう少しだけ、笑って、
ここにいて。
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